米国債の流動性低下が問題になっている

世界一の国債マーケットともいえる米国債の流動性低下が著しい。今年の6月からFEDが金融引き締めを始めたことによる影響が日々の取引に表れ始めている。米国債を取引するバイサイドによると$50mmを超えるようなサイズの取引の場合は、小分けにして取引をするようになっているという。しかも流動性の低いオフザランを避ける投資家が多くなっている。リーマンショックの時期を除くと過去20年で最低の流動性とも言われている。

取引量自体は月間$630bnとのこのことなので、そこそこの水準を保ってはいるが、取引しているトレーダーの感覚としては非常にやりにくいとのことだ。$100mm単位の取引の場合ヘッジが難しくなるので、$25mmとか$50mmに分けて取引しないとマーケットが動いてしまう。20年国債などはあまりの流動性のなさから取引を敬遠するディーラーさえいるとのことだ。

コロナショック来に資産買い入れを拡大し、マーケットに溢れた債券を急速に吸収しようとしているため、その反動がきている。銀行のトレーダーにとってみると、バランスシート規制があるために多くの在庫が抱えられない。価格が飛ぶので大きなサイズの取引に対してプライスを出すのがためらわれる。

しかし、日本からすると、米国債でここまで大騒ぎになっているのが不思議なくらいである。JGBとレーダーからしたら何を甘ったれたことをという感じだろう。日本国債はそもそももっと問題が深刻であり、流動性は比較にならないほど低い。回号が異なるだけで価格の動きが変わり、突然プライスが飛ぶことも多い。金利が動かないためトレーダーの数も減っており、今や収益のためというよりは、日本の市場を支えるためにボランティア活動をしているような錯覚にすら陥る時がある。

米国に必要なのは銀行のマーケットメイク機能の拡大であり、日本に必要なのは、金利の市場機能の回復なのだろう。