Twtterを皮切りに、Tech企業における人員削減が相次いでいるが、金融においてもGSをはじめとして人員削減のニュースが続いている。同時にほとんどの企業でボーナスカットがアナウンスされており、最近ではAppleのCEOの報酬40%が公表されている。トップ自らが下げるということは従業員の報酬も下がることが予想される。
確かにM&Aの収益が半減したものの、その他のトレーディング収益がそれほど落ち込んでいる訳ではないのに、あまりにも多くの企業が大胆な報酬カットに動いているように思える。バイサイドでもBlackrockなども報酬カットがニュースになっている。大手金融機関合計で30%-50%の削減という報道もある。
米国では当然インフレーションが最大の問題になっており、これを抑え込むために急激な利上げが継続している。なかでも賃金に関しては硬直性があるため、FEDとしてはこれが上がり続けるのは何とか避けたい。となると、もしかしたら当局から米銀トップや大手企業のトップに賃金抑制の依頼が行っているのではないだろうか。
全体に占めるシェアの大きい金融やテクノロジー会社の報酬がここまで下がれば、消費に対しても影響があるだろうから、全体の統計にも影響が出てくるのは間違いない。つまり利上げをせずにインフレを抑える効果がある。企業のトップに一本電話をすれば良いだけなので、非常に簡単な政策だが、かなりの効果があるように思う。
つまり、米国当局には物価をコントロールするツールが一つ余分にあることになる。そうすると、今後物価上昇はかなり抑えられてくるのではないだろうか。特に富の集中の激しい米国では、一部の大手企業が動けば相当のインパクトを全体に与えることが可能である。
日本では、デフレが続いた中ても賃上げをする企業はなかった。唯一ファーストリテイリングの40%増が目立つくらいである。おそらく、記者会見等で賃上げが望ましいとコメントするのが精いっぱいで、当局サイドから企業に対して直接のアプローチをしていることはないだろう。
米国がこれをしているという話は聞かれないし、当然明確に指示をすることはできないが、「ちょっと抑制してくれるとありがたい」程度ならあり得ない話でもないのではないか。