FRBから市場関係者が長い間注目してきたSLRについてのコメントが出始めた。極めつけはWall Street Journalにも掲載されたパウエル議長のコメントだ。2月12日の議会証言で、米国債マーケットの市場構造改革を示唆し、その中でSLRの修正が必要だと思うという趣旨のコメントをしていた。
金融危機以降こうした当局からのコメントで市場が動くようになったため、トレーダーが規制について最新情報を得るのは必須になったが、このコメントの前後にも、国債とスワップのネガティブベーシスが7-8bp動いていたようだ。日本でもCCPベーシスに関連してトレーダーがポジションを取ることがあったが、それに似たような動きを見せている。
教科書的には、国債の利回りは国の信用力を表し、LIBORが使われていた頃は特に、Swapレートは銀行の信用力を表すなどと言われていた。つまり銀行より国の信用力の方が高いのだから、国債の利回りはスワップ金利より低くなるべきである。しかし、SLRや各種バランスシート制約によって、国債を持つ方がコスト高になり、国債利回りとスワップ金利との逆転現象が起きている。
そして米国では国債と国債先物やスワップを使ったベーシストレードが盛んに行われ、当局サイドの注目も集めている。おそらく多くのトレーダーがネガティブベーシスの縮小にかけたポジションを持っているものと予想される。個人的には、CCPベーシスの時とは違い、SLRの計算から米国債を外すというニュースでそれほど大きな動きになるのは若干不思議に思える。コロナの頃は米国債がSLRの計算から除外されていたのだから、既に起きたことでもあるのだが、同じようなことを考える市場参加者が増えるとマーケットというのは動いてしまうものなのだろう。
いずれにしても、しばらくの間、こうした規制面に関するトレーダーの関心は高い状態が続くのだろう。