為替取引の未来

為替のスポット取引の電子化はかなり進んだが、直近ではフォワードや為替スワップ、NDFにおける取引が急速に増えている。

こうしたスポット以外の1日の取引量は、昨年比2倍近くに増えているというデータもある。フォワードについては、従前3ヶ月未満がほとんどだったが、最近では1年を超えるような取引も増えてきている。今後は為替取引のかなりの部分が電子取引に移行していくだろう。

一方大手ディーラーはスポット取引のInternalizationを進める傾向が顕著になっている。外部の取引プラットフォームで取引を行いマーケットを動かしてしまうよりは、内部で売り買いをマッチングさせることができれば、マーケットインパクトを抑えることができ、取引コストも低減できる。

2016のバーゼルのレポートでは、63%のスポット取引がinternalizeされており、多いところでは90%を内製化している。こうなると、規模の経済が働くようになり、取引量の多い大手銀行が有利になる。為替関連取引からの収益の60%は、上位10銀行が上げているというデータもある。

すると今度は、パブリックプラットフォームでの取引が少なくなり、価格の透明性を低下させる懸念が発生する。内製化を完全に禁じることは難しいだろうが、米国の規制はこうした取引をなるべくパブリックな執行Venueを使うように義務付ける傾向があるので、SwapをSEFで取引させたように、極力パブリックな執行機関経由で取引させる規制が生まれるかもしれない。

アルゴやHFTの台頭もあり、取引を小刻みに分けて行い、マーケットインパクトを減らすという努力も続けられているため、そもそも価格が見えにくくなる要因は内製化に限らない。

ここ数年の電子化の拡がりと、内製化の増加は、今後の為替マーケットの方向性を変えていく可能性がある。しばらく、注意を払っていく必要がありそうだ。