ローンの返済が滞った場合には、通常なら銀行は引当金を増やさなければならないが、EUではこのルールを緩めてよいという発表が水曜にあったと報道されている。返済猶予や州ベースでの保証なども検討されている。IFRS9によればこうした返済猶予等があると、引当金を積み増さなければならないのだが、コロナショックを受けた一時的流動性逼迫等については柔軟な取り扱いを認めるというものだ。
経済対策としては、影響を受けた企業に対して直接お金を回すことが日本ではまず検討されるが、こうした規制、会計上のルールの柔軟適用は、お金を使わずに経済活動に影響を与えることができるという点で優れている。今回の各国の対応を見ていると、こうした規制緩和のニュースがあちこちで聞かれる。
ECBの前総裁のマリオ・ドラギはFTの社説の中で、規制や担保が人々の雇用や経済を守るための障壁になってはならないと強く述べている。そして今回の危機を戦争になぞらえ、スピードが最も重要だと主張している。
日本においては、企業支援策等直接資金を供給するという政策については、色々と議論が進んでいるようであるが、規制緩和方向の話はあまり聞こえてこない。もしかしたら金融特有の問題ではなく、ルールや規制を柔軟に変えるということが難しい国なのかもしれない。海外は都市封鎖や一般企業に人工呼吸器を作らせたり、外出時のルール等も矢継ぎ早にどんどん出てくる。日本はあくまでも自粛要請だったり、法的拘束力を伴わないものばかりが出てくる。
戦時中は国家総動員法とか金属類回収令とか、様々な法律が柔軟に制定されたと思うが、もしかしたら戦争の経験によってこうした法律を柔軟に変えるということにアレルギーができてしまったのではないだろうか。あるいは占領中にこうしたことができないようにされてしまったのか。この辺りは専門家でないので良くわからないがいずれにせよ、日本の対応が全て遅いというのには何か理由があるのだろう。
こうした危機時に日本が優れているのは、もしかしたら既存の法律の枠組みの中で柔軟に動ける、民業圧迫と批判されてきた政府系金融機関の役割なのかもしれない。