今日は久々にISDA Margin Surveyを見てみる。まずはSurveyに参加している大手ディーラーが受け取った担保額を確認してみると、VMは市場変動に合わせて動いているが、IMが着実に増えているのが確認できる。

当初証拠金のマージン規制が2016年から段階適用されているので当然ではあるが、2022年9月のIMビックバンまで、以下のように閾値が下がる程度に併せてIMが増えているのがわかる。
Phase 1 2016年9月 €3tn
Phase 2 2017年9月 €2.25tn
Phase 3 2018年9月 €1.5tn
Phase 4 2019年9月 €750bn
Phase 5 2021年9月 €50bn
Phase 6 2022年9月 €8bn
IM規制の導入が一段落したからなのか2023年から2024年にかけてIMの金額が横ばいとなったように見える。あるいはIM最適化の広がりによって増加に歯止めがかかっているのかもしれない。
以前は全体の担保額に対するIMの割合は10%程度だったが、今では約30%となった。マーケットの変動幅の拡大とデリバティブ取引の増加によって証拠金規制の対象となる市場参加者は今年も増えているので、新規IMによる担保増とIM最適化による担保減によって、今後の担保額が変動していくのだろう。
もう一つ特筆すべきなのが、IMに対する現金比率の低下である。以前は2割くらいが現金だったが、今では約1割となっており、国債担保が広く使われている。一方Other Seruciriesに分類される社債などの比率も35%に増えているのが興味深い。証券の方が倒産隔離が容易だからという理由もあるが、担保拠出コストの高まりによって、極力現金以外を使おうという動きがみられる。驚くことに、VMにおいても現金比率が8割程度から7割を切るところまで下がってきている。
現金以外の担保を拠出すれば、ディスカウントの影響で取引のプライスが悪化するのだが、そのデメリットを上回るコストベネフィットがあるということなのだろう。特に規制VMではない現金担保の場合は遂に6割を切るところまで来ている。
英国のGilt Shockでも明らかになったように、突然の市場変動で巨額の担保を求められると、保有している債券などの資産を現金化する必要がある。キャッシュリッチではない事業会社や、投資資産の売却を余儀なくされるファンドにとっては現金担保は使い勝手が悪い。今後も現金以外の担保を利用したいというニーズには根強いものがあるようだ。