今年は年末にかけてマーケットが神経質になってきている。FRBの金融引き締めの影響でファンディングコストが上昇しているのが背景にあるが、それ以外にも銀行のバランスシート制約等によって、大手銀行が金融仲介機能を果たせなくなっているのも大きい。
Risk.netにもFFとSOFRのベーシススワップの取引量が9-10月に昨年対比4倍以上になったという記事が出ているが、それ以外にもレポや株式貸借など、短期のファンディング市場において資金ひっ迫を懸念する論調がメディアで目立ち始めた。
おそらく年末に向けてバランスシートやG-SIBスコアの上昇を抑えようという動きが、レポレートやSOFRなどの上昇とファインディングコストの上昇を招いているものと思われる。ファインディングコストの上昇を懸念するニュースが例年より多く、年末に向けて短期の資金を提供できる銀行は少なくなってくるだろうから、このままの状況が続けば、何らかの緊急資金支援が行われる可能性も否定できなくなってきているのではないだろうか。また重要な決済日にレポレートが急上昇するといった事態も想定される。
5年ほど前も、FFレートとSOFRのスプレッドが300bp近くに開いたことがあったが、同じような雰囲気も感じられる。今年もSOFRは10月まで比較的落ち着いた動きを見せていたが、そこから急速に担保付のSOFRが上がり始めFF vs SOFRベーシスが開き始めた。短期資金を確保しようというニーズが急速に増えると、レポや株券貸借取引のレートが跳ね上がる。
金融危機後の規制改革によって金融市場は安全になったのは確かだが、これは主にカウンターパーティーリスクについて言えることである。市場リスクや流動性リスクについては、むしろ悪化しているようさえ思える。以前に比べて、年末や四半期ごとに短期資金がひっ迫したり、突然のマーケットが一方向に動いて止まらなくなるということが頻繁に起きるようになっている。
以前はマーケットが動き出すと、金融機関のトレーダーが逆のポジションを取ることにより、その動きにストップをかけていたが、今ではバランスシート制約、資本規制、ボルカールールによって、大手金融機関にこうしたキャパはなくなっている。ヘッジファンドや新興のマーケットメーカーが一部これを埋めているが、一方で流れに乗るシステマティックトレーディングも増えているため、全体としてはリスクが一方向に流れやすい。
トランプ政権になって、こうした市場流動性の低下が抑えられるのかに注目が集まる。