Credit Risk Transferについて耳にすることが多くなってきた。当初は証券化商品を担当する部門から、ローンのリスクトランスファーに関連するディールの話を聞くことが多かったが、そこからデリバティブへの応用という形で話が進んできた。以前からデリバティブ取引のRisk Transferに携わってきた身としては若干不可解に思えてしまうが、もしかしたら、ずっと下火だったリスク移転の話がここから盛り上がりを見せるのかもしれない。
昨年後半にFRBがリスク移転についての要件をQ&Aの中で明確にしたことから、SRT(Synthetic Risk Transfer)の形で米国で注目が集まった。これをデリバティブ取引にも広げて、資本削減やG-SIBスコアの削減などを図る動きが欧州でも活発化してきたのが昨年の初めくらいからである。
デリバティブ取引のリスク移転についておさらいすると、金融危機前後にCDSとともにCCDSがいくつか取引され、こうした取引が技術的に難しいという場合は、保証やRisk Participationが使われた。昨今でもコモディティの世界では普通にFourth Trigger CDSが取引されている。これは通常の3CE(3つのクレジットイベント)に加え、ISDA上のデフォルトを4つ目のクレジットイベントに加えるというものだ。
昔は信用枠をリリースしたり、リスク集中を避けるためにクレジットリスクを減らそうという動きが中心だったが、近年ではリスクを減らすというよりは資本コストを減らすためにこうした取引が行われることが多くなってきた。当然厳しい資本規制下にあるのは大銀行になるが、こうした規制の影響を受けない保険会社やアセマネなどのバイサイドやヘッジファンドなどがリスクを取れば、Win Winとなる。または国際基準行などのように厳しい資本規制の対象とならない地銀など、その他金融機関がリスクを取ってリターンを上げることもできる。
リスク移転の最も簡単で確実な方法は、取引をそのまま移してしまうNovationだ。しかし、通常は相手方に知られずにヘッジしたいというニーズが多く、CDS、CCDSなどサイレントでできるリスク移転が好まれる。本来であれば、より取引を継続的に行い長期的に顧客サービスを提供するために、一部リスクを外したいと言えば、顧客である事業会社なども理解してくれそうなものだが、銀行の営業としては、大事な顧客にリスクを他に移すということはなかなか言いずらいというのが現状だろう。
また、リスク移転は相対での取引となることが多く、なかなかお互いのニーズがマッチするような状況を見つけるのが難しい。何かオークションのようなプロセスや、いくつかの投資家のマッチングをするようなサービスがあれば、マーケットが膨らむかもしれない。そして、マッチング後もMTMの計算支援、デフォルト時の判定等まで弁護士と協力して公平なプロセスを確立できれば、金融の発展に資するものと思われる。