不動産マーケットに起きている変化

米国のシェアオフィスの空室率上昇がニュースになっていた。日本ではシェアオフィスの利用はまだ少ないが、近年利用度が高まっている米国ではこれが先行指標となるかもしれない。

通常のオフィス契約は5年リースなどになっているので、在宅勤務が多くなったからと言って契約解除は困難だが、シェアオフィスの場合は契約期間が数か月から1年程度なのでキャンセルが容易である。

こうなると、比較的変化の少なかった不動産価格が変動するようになるかもしれない。また不動産融資に対する銀行の見方も変わってくる。

特に近年海外ではシェアオフィスの割合が着実に上昇しており、このトレンドが続けば、シェアオフィスを含めた空室率が不動産市況に影響を与えるようになる可能性がある。

仕事の仕方一つを取ってみても、膨大な紙やファイルがなくなり、すべてデータ化されてクラウドに保存されるようになっている。紙を配る代わりにタブレット等に情報を表示することが増え、プリンターの使用頻度も急速に減っている。どこからでもリモートアクセスできるようになっているのでPCの物理的な場所も問わない。海外では、頻繁なクリーニングをするため、私物を卓上に置くということもなくなり、極力机の上を整理するようになってきている。つまりリモートアクセスさえできれば、オフィスはどこにあっても構わない。

銀行ですら、部門ごと別の場所に移しても通常業務ができるようになっている。セキュリティ対策を不安視する声が日本では聞こえてきそうだが、リモートアクセスさえ完璧に制御していれば、実際の紙やデータの入った会社用PCを持ち歩くよりはよっぽど安全である。さすがに1から2割の出社体制が1年近くも続くと、これが常識にすらなってきている。おそらくシェアオフィスに移動したとしてもすぐに通常業務ができるだろう。

日本のオフィスは少しレイアウトを変えるだけで何故か海外とは比較にならないほどのコストがかかるが、こういったところも改めていかなければならない。シェアオフィスのコンセプトももっと広がってもよいだろう。特に日本の場合は地震や災害でオフィスが使えなくなる可能性もあるのだから、各所にシェアオフィスを確保するだけでBCP対策にもなる。シェアオフィスを前提としたオフィスビルの建築なども進んでいくと、競争力のあるビルと旧来型のビルの差も大きくなることが予想される。

Uberなどのライドシェア、Airbnbなどのルームシェア、WeWorkのようなオフィスシェアと、シェア経済はますます進んでいく。副業によって社員をシェアしたり、昼は洋食ランチ、夜はバーといった飲食用物件のシェアは日本でも増えている。

全般的には不動産市況が大きく崩れるというよりは、不動産の効率的活用ができるようになるような気がする。そのためには時代の変化に合わせて常に物件の魅力を高めたところが躍進し、何も準備をしていないところが没落していくという二極化が起きるのではないだろうか。