PfizerとBioNTechの新型コロナウイルスワクチン候補の臨床試験の中間解析結果によって、マーケットの雰囲気は一変した。当然ウィルス感染拡大後に好調だったテクノロジーセクターから、これまで打撃を受け続けてきた不動産や航空会社のようなセクターへの資金シフトが起きた。
デルタ航空やアメリカン航空などのような航空株は15%上昇、英国ブリティッシュ・エアウェイズなどは25%上昇した。ショッピングセンターなどの株の中には2日で50%上昇したものもある。ここまで半値以下になっていたものが戻った格好なのだが、これらの株をショートしていたヘッジファンドが巨額損失を被ったようだ。
バリュー株はは6.4%上昇し、1980年代以来の強い上昇となったが、モメンタム株は13.7%下落で過去最悪の損失となったというJPMの分析も報じられている。さすがにここまで動くとコンピューターを使ったアルゴ取引などのフローも変わってくるだろうから、ちょっとした転換点になっている。
ワクチンもめぐる状況は今後も不透明だが、それでも来年以降は前年比の業績が上向くところが増えるだろう。今年好調だったテクノロジー株も、前年比ベースでは大きく伸びないかもしれないが、そうは言っても業績不安が大きいわけではない。
一般的に米国株はテクノロジー株の占める割合が多いが、この流れからすると今後は米国から日本や英国への資金シフトが起きるかもしれない。
債券に目を向けると、一時的には金利の上昇を予想する声が多いものの、不透明性が高まればFRBが行動を起こすだろうから、金利が大きく上昇していくとも考えにくい。
ドル安とヘッジコストの低下もあり、特に日本の投資家から米国クレジット物への投資意欲も上がってくる可能性がある。足元でのドル調達コストは低位安定しているが、為替スワップや通貨スワップによってドル調達を行って米国社債に投資するという動きが出てくると通貨ベーシスのワイドニングも一定程度起きるかもしれない。
ただし、ファイザー等のニュースの後は、ジャンク債に大きな資金流入がみられた。よく見るとジャンク債の利回りは感染拡大前の水準まで完全に戻っている。銘柄選定は重要だろう。