ドル円通貨スワップの新レート移管が待ったなしに

国内ではLIBORからの移行が遅々として進まない。日々LIBORスワップが行われており、JSCCのデータを見ていても、どちらかと言えばTIBORへ移管しているのかと思えるほどの取引量になっている。

とは言え、来年からはLIBORが公表されなくなるのは確定しており、10月以降は新規取引にLIBORを使うことが当局からも推奨されていない。あと半年を切っているというのに、10月以降もLIBORを使えるかという問い合わせすら入る始末である。

プロトコルさえ批准しておけばLIBOR移管は終了と思っている市場参加者も多いのかもしれないが、海外当局者がコメントしている通りプロトコルはシートベルトのようなものである。シートベルトをしているからと言って時速100㎞で壁に突っ込んで良いということにはならない。壁に当たる直前に減速するとか、ハンドルを切るとか、何か行動を起こす必要がある。

顧客資産を委託しているファンドなどは、ハンドルを右に切るのか左に切るのかといった判断を入れることが難しいので、壁に突っ込むしかないという事情もあるのかもしれないが、その他の参加者は直ちに行動を起こすべきだろう。もしかしたら最近取引量が減っているのは、壁に突っ込む前にスピードを減速させているということなのだろうか。

特に通貨スワップについては、ドルLIBORの存続が18か月間延長されたことから、2段階の壁が存在している。こんな面倒なことになるのなら、事前にハンドルを切って2度の衝突を避けた方が明らかに得策なのだが、自主的に早期変換を行おうという動きはあまり見られない。それでも新規取引でRFRを使った通貨スワップは徐々に取引はされ始めているようだ。

通貨スワップに関してはARRCから2020年1月24日に出された勧告に移管に関するある程度のガイドラインが示されている(日銀も日本語でコメントを1月31日に出している。)。ここでは、変換の仕方について以下の3つの選択肢が示されている。

当然新規RFR vs RFRの通貨スワップが大々的に取引されていないので、どの方法が主流になるかは定かではないが、何となく③の方法が多そうだ。つまり、元本交換と最終金利支払いが2営業日ずれることになる。為替のFixingの仕方や決済日が変わることもあり、システム開発が追いつかないので移管が進まないと言ことなのかもしれない。

本来であればこうした詳細をはっきり決めた上で各社がシステム開発を進めて、一斉に切り替えるというプロセスが理想なのだろうが、やはり金融市場においては、当局がここまで細かいところに立ち入るのも困難だし、銀行が主導してしまうのも何となく難しそうだ。やはりある程度のコンベンションができてから、それをルール化していくというやり方しかできないのだろう。

LIBOR存続が延長されたUSDだが、新規取引については7月からはLIBORの利用の自粛が求められている。つまりドル円通貨スワップについては後1か月半でTONA vs SOFRスワップにしなければならないということになる。SOFRとLIBORと異なる通貨スワップが同時に存続してしまうのは色々と面倒で、スプレッドは固定されたとはいえ、一応LIBOR vs SOFRのベーシスリスクも管理しなければならない。

そうなると後数週間で通貨スワップの主流はTONA vs SOFRスワップということになるはずである。その割にはあまりにも静かだ。ほとんどの人は気づいているはずなのに、このまま皆壁に突っ込んでいくのだろうか。