ドル離れが懸念される中、トランプ政権がデジタル時代において米ドルの優位性を確立し、強化するための手段として、米ドルに裏付けられたステーブルコインを位置づけている。関税ショックによってドルを敬遠する動きがみられるかもという話があったが、現実的にはドルの地位は揺らいでおらず、代替となるのはステーブルコインくらいかと思っていたのだが、そこに対しても米国は早くから目をつけている。米国政権は、ホワイトハウスが出したレポートの中で、アメリカのクリプト黄金時代を到来させ、世界のクリプトの中心地としてアメリカが君臨することを目標としている。
この機を捉えて、CFTCのファム委員長代行は、9月23日に、デリバティブ市場におけるステーブルコインを含むトークン化された担保の利用に関するイニシアチブを正式に立ち上げた。これは、GMACのデジタル資産市場小委員会が昨年に発表した非現金担保の利用拡大に関する提言に基づくものである。ファム氏は、担保利用こそステーブルコインのKiller Appだと断言している。若干強引ではあるが、こうなると突然トランプ大統領の壮大な未来像がデリバティブの担保利用の話につながってくる。
確かに流動性とコスト効率の向上が期待できるステーブルコイン(USDCなど)を担保として使用すれば、担保授受が瞬時にそして用意に行われることになり、MPORの短縮を通じて資本コストの削減にまでつながるかもしれない。
ISDAも、トークン化が担保管理の適時性と効率性に大きな改善をもたらし、市場参加者により大きな選択肢と柔軟性を提供するとコメントしている。例えば、これまで担保利用が難しかったMMFをトークン化すれば、現金化して担保に出すというプロセスを経ることなく、ファンドのシェアを直接担保提供できるようになる。これは各種資産に投資している年金やファンドにとってはGame Changerになることは間違いない。決済が難しかったゴールドなどもトークン化することによって担保利用が可能になる。
米国ではいわゆるGENIUS法によって法的枠組みの整備を進めており、証拠金規制の担保としても利用できるように議論が続けられている。ISDAにおいても、CDMなどのイニシアティブを進めて、明確で一貫性のある法的および規制の枠組みを確立する方向で議論が続けられているようだ。
こうなってくると、おそらくCFTCはDCOに対してもデジタル資産担保受け入れに向けたガイダンスを出してくるのではないだろうか。そしてCCPやカストディアンがこれを後押しすることにより、思ったより近い将来にこれが実現する可能性もある。
やはりこういった動きについては米国が早い。日本では金融業界でもあまり話題にならないが、JSCCではDRR/CDMを使った規制報告などの高度化に取り組んでいる。可能であればデリバティブの分野においても日本主導で業界の進歩につながるような変革が起きてくれると良いのだが。