マーケットではまだ全容が見られないターム物RFRに対する期待が強い。金利が最初に決まるFoward lookingな前決め金利だからというのが大きいのだろう。特に金利が決まってからすぐに決済ができないという日本での期待が最も強いようだ。
昨年11月のEURのRFRワーキンググループで行われたターム物に関する市中協議では、40%が金利の前決めを希望し、58%が後決めを支持した。日本で同じような調査をしたら半分以上は前決めを希望するだろう。日本でTONA後決め複利金利かTORFなのかという二択の議論が起きているのがその証拠だと思う。どちらが主流になるかわかるまでは移行作業を行わないという意見すら聞かれる。
日本のターム物金利であるTORFの算出手法は、TONAに基づいて決まるため、TONAなしにTORFが存在するのは不思議な話なので、本来は二択というよりは、TONA→TORFという順序になるはずである。何となく気持ちはわからなくもないが、どうせTORFに行くことになるのなら最初からTORFに統一したいという声も最終投資家から聞かれる。しかし、このままTORFを待っていたらいつまでたってもLIBOR移行ができず、年末になって大慌てをすることになるのが目に見えている。
確かに日本におけるローンや債券のフォールバックレートの第一順位はターム物RFRとなっている(参考)。新規LIBORローンや債券が第三四半期からは使わないことが推奨されているので、TORFへの移行が進むという期待があるのだろうが、果たしてそうなのだろうか。
英国ではGBP建てローンのうち、フォワードルッキングなターム物SONIAに移行するのは少数だと繰り返しコメントされており、デリバティブ市場でも大きな移行があるとは想定されていない。米国では、AMERIBORやBSBYといったクレジットスプレッドの含まれた金利への移行の動きもあり、ターム物RFRへの移行が進んでいる様子はうかがわれない。
各国のターム物の公表は以下のようなスケジュールで進んでいるが、先行する英国での移行が進まず、米国も流動性が全く伸びていかない中、日本だけが突然TORFを使うようになるとは個人的には全く思えない。EURに至っては、参考値すら公表されていない。
日次参考値公表 | 確定値公表 | |
JPY | 2020/10 | 2021年央 |
GBP | 2020/7 | 2021/1 |
USD | 2020/10 | 2021 Q2 |
そろそろ前決めのTORFの流動性向上を待つよりも、後決め複利でも良いからすぐさま行動を起こす時期が来ているように思う。逆にTORFへの期待感がLIBOR移行を遅らせることになっているとしたら本末転倒である。