先週は米銀トップから出たオフィススペースへのニーズは減るという趣旨のコメントが注目を集めた。確かに世界の大手金融機関は出社率ほぼ10%未満でも全く問題なく機能している。ニューヨーク、ロンドン、香港といった過密都市の商業用不動産へのインパクトも出てくるだろうとコメントしている。英語版の記事の方には、JPモルガン、BlackRock、KKR等のオフィスプランについても紹介されている。
確かに10%未満の人しか使っていないオフィスに対して高い賃料を払い続けるのはどうかという議論が出てくるのは当然だが、これは、将来的にも、この在宅勤務が一時的なものでなく新たな標準となっていくと考える人が多くなってきたという証拠なのだろう。一方、人と人との距離を取るという意味からは、狭い部屋に人を詰め込むのではなく、スペースを広く取る必要もあるだろうが、全体的な影響からすると商業用不動産やREITにとってはネガティブだ。
考えうるのはオフィススペースを半分以下に減らして週に何度か、あるいは月に一週間とか出社にし、その他は自宅勤務という方法だ。出勤者はLaptopを持参して、空いているオフィススペースに接続するという方法になる。高性能PCはどこかの安いスペース(あるいはVirtual PCを利用)にまとめて置いておき、そこに自宅からでもオフィスからでもリモートアクセスをすれば良いだろう。
職種によってはオフィスへ出社しない社員というのも出てくるだろう。もともとITサポートの一部はインドだったり、一部財務作業やクオンツ部隊が中国にいたりということはすでに実施済みだが、こうしたサテライトオフィスから勤務する人も増えていくのだろう。
在宅勤務を始めて思ったのだが、忙しい人とそうでない人が完全に分かれてしまうということだ。忙しい人の電話、メール、チャットは自宅であってもひっきりなしに入ってくる一方、受け身の社員の場合は、何もつながりがなくなり孤独感を感じてしまう。意外と家でも仕事ができると感じる人がいる一方、仕事がなくなったと感じる人もいる。仕事がないなら遊んでしまうかというとそうでもなく、次第に焦りに変わってくるようだ。仕事を頼むと喜ばれるということが以前より格段に増えた。
働かないおじさん問題がネットでも良く上げられているが、やはり会社に来るだけで仕事をしている感になっているということもあったのかもしれない。そういう人がこの状況でも出勤アピールをしているというのもその表れなのだろう。ただし、これは悪いことばかりではなく、満員電車の通勤や交通渋滞、子育て、介護問題から皆が解放されるようになる。東京一極集中にも歯止めがかかり、地方分散が進めやすくなる。個人の労働時間も格段に減るだろう。あとは空いた時間を何に使うかというところで大きな差が出てくる。もともと海外は長時間労働の意識が少なく休暇も十分にとっていたので変化は少ないだろうが、日本の場合はかなり大きな社会的変革が起きることになる。
問題は、チームの結束を高めたり、仕事の分担をしたり、新人を教育したり、OJTをしたりというのが本当に難しくなってくるので、様々な工夫が必要になる。全員が完全に在宅で全てオンラインのみのつながりだけになるというのは、いくらテクノロジーが進化したとしても難しいだろう。都市封鎖が解禁された中国ですら、各種感染対策をした上で出勤生活に戻っている。
記事にあった米銀トップも最後に以下のように締めくくっている。やはり人と人とのつながりは、何らかの形で続けていくのがベストなのだろう。“I’m still a huge fan of mentoring, bonding and having teams together and the creative surges that come from having people working together,”