JPMの財務データからCVA/FVAの情報を見てみた。予想通りコロナショックによって第一四半期、第二四半期ともに変動が大きい。
これらはヘッジ考慮前なので、ヘッジ後はこの影響は小さくなる。第一四半期のアナウンスでCredit Adjustment&Othersで$951mmの損失が出ていて、そのほとんどがファンディングスプレッドの拡大によるものという記述があるので、CVAはかなりの部分ヘッジされており、ほとんどの損失はFVAから来ているものと推測される。自社のファンディングコストをヘッジするのは容易ではないし、これを敢えてヘッジする金融機関は少ないと思えるからだ。
10Kには計算根拠についての情報も出ており、いわゆるポテンシャルエクスポージャーやExpected Exposureなどの年限毎のグラフも見ることができる。Management’s discussion and analysisのセクションでAVGとして示されているのがExpected Exposure、DREがデリバティブリスクをローン相当額に変更したLoan Equivalent、PeakがPFEに、それぞれ相当するものと思われる。Peakは97.5%の信頼区間のVaRに近いようだ。Expected Exposureは$30bn-$40bn程度であることと、CVAやFVAの金額が公表されていることを考えると、JPMのFVAに計算しているスプレッドや、カウンターパーティーの信用スプレッド等もある程度逆算できるように思う。ここまでのDisclosureがあるというのはさすがだ。
$951mmというのは結構なサイズだが、Q2にFVAの利益が$676mmとなっており、かなりの部分を取り戻している。一方CVAの方はQ1の$924mmをQ2で$207mm取り戻した形になっているが、ヘッジがあるので実態はよくわからない。つまり金融機関の社債スプレッドが動くと、この規模での収益のアップダウンがあるということになる。
以前はCVAがある程度DVAでオフセットされていたが、FVAが入ってくると市場混乱期には損失が膨らむことになり、プロシクリカリティは増すことになる。ローンのリザーブも増えるだろうから、その影響は更に大きくなる。その分市場のボラティリティが増すのでトレーディング収益が上がるので、全体としては大きな問題にならないのかもしれないが、これは自己勘定ポジションを抑える金融危機後の規制強化の恩恵なのかもしれない。