アジアにおけるNDF市場に関するIMFのペーパーでNDFの取引が急増している様子が紹介されている。COVID19でNDFの動きが激しかったため、ここから他のマーケットに影響が広がることを政策当局者としては注視しているようだ。このペーパーにある2013、2016、2019年の取引量のグラフを見ると、最近の取引の伸びには目を見張るものがある。2019年の取引量は3年前の2倍以上に伸びており、グローバルにおけるシェアもアジア通貨が6割程度になっている。INRなどは3倍、TWDは2.7倍、KRWは2倍とのことだ。2020年にはこれがさらに伸びていることが予想される。
NDFはヘッジコストが高いため、市場混乱が起きた時に投資家がヘッジをあきらめ、現地通貨建て社債等の売却に動くという懸念も挙げられている。取引量の大きな通貨はINR、KRW、TWDだが、この3通貨でグローバルNDF取引の55%を占めており、CNYが5%とのことだ。アジア以外では、BRLが14%、RUBが2%である。主要3通貨については、NDFの取引量がSpotやFowardと比べても格段に大きいという特徴もある。特に台湾では、ドル建ての債券であるFormosaがグローバルでも有名だが、このヘッジニーズが恒常的に入っているようだ。
NDFは現金決済のあるFX Forwardとは異なりマージン規制の対象となっているため、取引量の多い市場参加者は当初証拠金の拠出をしなければならない。そして延期されたとは言え、来年、再来年に対象会社が広がるため、CCPでの清算も増えてくるかもしれない。LCHもNDFのクリアリングを強化しているという報道もあったが、来年以降クリアリングに移行する動きが本格化する可能性がある。金利スワップと同じようにクリアリングNDFと相対NDFでプライスに差をつけるところが出てきているというコメントが報じられたこともあったが、おそらく金利スワップと同じようなクリアリングへのシフトが起きてくるのだろう。
特に今回のコロナで明らかになったのは、NDF市場はオンショアの為替市場よりも変動が大きく流動性インパクトも大きかったという事実だ。ローカルマーケットが動かなかった時でもNDFマーケットだけが海外投資家のフローの影響を受けて変動するというケースも散見される。ただこれは裏を返せば、NDFのトレーディングは収益機会が大きいということなのかもしれない。