銀行とIT

海外で銀行とFintechの提携が急増している。米国通貨当局(OCC)のMichael Hsu氏が先週コメントを出しているが、銀行とFintechの連携について懸念を表明している。指数関数的にこの連携が広がっているため、事務フローが複雑化しすぎており、このままのペースでいけば、何か大きなトラブルが発生するというのが主な懸念だ。ここまで複雑に責任分担が細分化してくると、ガバナンスや責任の所在が不明瞭になり、トラブル発生時にも責任の押し付け合いが発生するかもしれない。

銀行に対しては様々な規制がかけられているが、Fintechとの役割分担を前提とした規制にはなっていない。どの当局が何をカバーすべきかも明確になっていない。最近では銀行が出資するFintechがかなり多くなっている。Upsideを取るために何でもかんでも投資しているような印象すら受ける。

日本では、一部IT企業との連携がニュースに出るくらいで、海外のようなスタートアップ的なFintechとの連携はあまり聞かれないので問題になっていないが、逆に海外との差がどんどん拡大しているように思える。

確かに今後の金融業はFintechとの共同なしにはやっていけない。金融機関内部のIT部門では、自社に必要なテクノロジーの開発には熱心だが、業界全体のプラットフォームを作ろうという話にはならない。日本でこのようなプラットフォームを立ち上げようというFintech企業が出てこないのは淋しい限りである。こうした企業はほとんどが大手銀行を飛び出した人材によってつくられている。終身雇用のもとでは、なかなかこういった技術革新は起きにくいのかもしれない。また立ち上げたとしても、人を採用するのに苦労し、解雇すらできないので海外で起業した方が格段に楽である。

もう一つHsu氏の指摘で面白いのは、各当局があまりにもCryptoに注目しすぎて他の重要な規制がおろそかになっているというものだ。はやりではあるし、人目を惹きやすいからなのだろうが、確かに欧米の規制ではCryptoをどうするかという話が良く聞かれるが、銀行内部の人間からすると、どこか関係のない世界のように思えてくる。確かに将来的に極めて重要なテーマにはなってくるのだろうが、それにここまで時間を使うよりは、喫緊の課題に対処すべく、時間を使った方が良いというのは正しい指摘なのだろう。