金融のIT産業化

電子取引、アルゴ取引の増加に伴い、為替マーケットにおける大手銀行の寡占が進んでいると報道されている。おそらく感染拡大による影響もあるのだろうが、この流れは引き続き進むものと予想される。2020年には、JPM、UBS、DBのトップ3で30%のマーケットシェアを占めたとのことだ。

電子取引やアルゴリズム取引への投資は不可欠となり、その巧拙が金融機関の収益を左右するようになっている。やはりこの分野でも欧米の銀行が先行している。金融については日本はやはり追いつけないのか。やはりシステムの弱さが世界的に際立っているような気がする。

金融取引では、コスト管理と効率性が求められるが、人海戦術でミスをなくす戦略を続けてきた銀行には太刀打ちできない。また、国内のシステム会社も海外に比べると格段に弱い。インドやハンガリー、中国といった国々の優秀なエンジニアの使い方が上手くないというのも関係しているのかもしれない。

20年以上前に米国で過ごした時期に、銀行通帳に頻繁に誤りがあり、日本の銀行の優秀さを改めて実感したのだが、そのミスをなくすために徹底的に人間がチェックをしていたのだろう。米国ではミスを指摘されたら直せばよい、99%正しければ十分で、最後の1%を向上させるために膨大なコストがかかるなら、費用対効果に見合わないという考え方だった。

日本なら1%のミスをなくすために極限まで努力をしろという文化があったように思う。顧客サイドにも間違いを許さない文化が日本にはある。そうこうしているうちにテクノロジーが進歩して、ミスを機械的に防ぐ方法が進歩しており、日本は完全に後れを取ってしまった。

昨年3月には、パンデミックによってボラティリティーが上昇し、Bid/Offerが金融危機以来の水準まで拡大し、金融機関に収益をもたらすこととなった。マシンが動いていれば収益が上がるということで、金融が完全にIT産業化している。株式や為替で始まったこの流れは、債券市場にも波及しており、コロナ感染拡大はこれに拍車をかけた形になっている。

記事にもあるように、銀行はアルゴリズム取引に多額の投資を行っており、変動する市場の状況に応じて取引スタイルを自動的に変更するようなAdaptive Algoも登場した。2020年には、為替トレーダーの4割以上がアルゴ取引を使っており、今後はこの比率の上昇が見込まれる。やはり日本には、金融のみならずテクノロジー企業の進歩が不可欠である。