規制が流動性枯渇を助長した?

少し前のものになるが、7月にCFTCがマージン規制の当初証拠金の適格担保拡大を指示するコメントをしていた。このブログでも規制強化によってディーラーの体力低下が流動性の枯渇と、極度の市場変動をもたらしていることは何度か紹介してきたが、このコメントを読むとCFTCも「重大な金融危機は市場流動性の欠如によって起きた。」と述べられている。

リーマンショック後の各種規制、特に清算集中規制と証拠金規制により金融システムから信用リスク、カウンターパーティーリスクの削減が図られた。そして金融機関に十分な資本を積ませることによってシステミックリスクを避けようというものだった。これによって、金融機関の頑健性は高まり、連鎖倒産のようなシステミックリスクを軽減したのは事実であろう。

しかし、一つ気になるのは、米国債、英国債、各種コモディティなど、極度の市場変動が大きくなったことである。もちろん、コロナウィルス感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻といった特殊事情はあったが、現場の感覚からすると、市場変動が起きたときに、金融機関サイドはそれを静観せざるを得ないようになってきたように感じる。

最近では少し影響が少なくなってきたが一時期はボルカールールに抵触しないよう、こうした市場変動に立ち向かって反対の取引をすることが難しくなった。また、レバレッジ比率規制の影響などもあり、国債を買ったり、レポを提供すると資本コストが膨らんでしまうため、以前のようなサイズで取引をすることができなくなった。また、アルケゴス以降巨額損失を避けるプレッシャーが銀行トップに重くのしかかり、何か大きな市場変動があった時は、できるだけ何もしないようにしようという意識が銀行業界全体を覆っているようにも思える。

以前であればあまりにもマーケットが動けば、反対のポジションを取って収益を上げようという銀行ディーラーの取引が、一方向に動くマーケットのバックストップになっていたと思う。今ではこのようなことはかなり難しくなっているので、ヘッジファンドなどがそれを補っているが、ヘッジファンドの取引相手方となる銀行が保守的になっているため、あまり大きなサイズで取引ができない。

つまり、信用リスク、カウンターパーティーリスク、システミックリスクを減らすために規制強化を行った副作用として、市場全体の流動性が枯渇し、極度の市場変動が起きやすくなっているのではないかと思う。

おそらくCFTCもこのような状況に気づいていて、市場変動時に年金やファンドが保有資産を投げ売りしなくて済むように、適格担保の要件拡大などを推し進めているのではないだろうか。短期のレポを活用するMMFはCCPの適格担保ではないが、証拠金規制上は、適格とされていない。これはもともと当初証拠金にはリハイポ(担保の再利用)を認めていなかったため、レポを利用したMMFも平仄を揃えただけのように思う。

ただし、これで適格担保に認められるMMFは非常に少なく、実質的にはMMFは当初証拠金には使えないということでロビー活動が続けられてきた。これが認められると、確かに市場変動時の資産売却がマーケット変動を加速させた2020年春の米国、昨年2022年9月の英国の金利変動のようなインパクトを和らげることができるかもしれない。少なくとも、保有資産を急いで売却するという動きを若干でも減速させることができる。

このような変更をするとMMF市場の安定性を損なうという反対意見があるようだが、市場変動時に売却せずに担保に使えるようになるのだが、あまり
MMF市場の不安定化につながるとは思えない。コメント期限は10月10日だが、おそらくこのまま認められることになるのだろう。あまり日本には関係のない話かもしれないが、適格担保の拡大は、流動性リスクを減らすためのツールとしてこれからも検討されていくのだろう。