複数CCPによる市場分断をバーゼルが懸念

Baselから12月にCost of Clearing Fragmentationというペーパーが出ている。CCPが複数存在するために市場が分断され、ヘッジやリスク管理が難しくなっているという趣旨だ。特にドル金利のLCH/CMEベーシスについての言及が中心だが、JSCC/LCHベーシスの存在についても触れられている。

米国では、事業会社が固定クーポンのドル債を発行すると、それを変動化するスワップが発生することが多い。つまりディーラーが固定金利を事業会社に払う。これをヘッジするには、ディーラーはインターバンクで取引を行うが、これは当然固定受けになる。つまり相対取引で固定払い、インターバンクのCCP(これはLCHが中心)から固定受けのポジションがたまる。したがって、CCPに対する当初証拠金が大きくなり、これ以上固定を受けたくないという心理が働く。CCPの場合は、一定程度ポジションが偏ると、当初証拠金が急速に増える仕組みになっているため、是が非でもその方向を避けようという銀行が出てきてもおかしくない。とは言え、マーケットリスクリミットがあるためヘッジをしないという選択肢はなく、コストをチャージして逃げようというのが最も簡単な方法になる。ブローカー間で取引がついてしまうインターバンクでプライスを悪くするのは無理なので結局は事業会社に対するスワップにチャージをするしかなくなり、結局は発行体がコストを払わざるを得なくなる。金融危機の反省からCCPへの移行を進めたためにエンドユーザーである事業会社がコスト高に苦しむという構図になっている。これにバイサイド中心のCMEとディーラー間中心のLCHという問題が重なり、あちこちで市場分断が起きてしまう。

では事業会社がクライアントクリアリングに接続してCCPで清算すれば良いということになるが、担保授受に慣れていない事業会社は取引の精算には及び腰となるケースが多いだろう。あとはディーラーが固定受けをしているスワップをCCPにバックロードする方法もあるが、これもそのようなニーズは今となっては稀である。

CCPは自らのリスク管理強化のために当初証拠金をしっかりと取っておく必要があるため、担保金額を下げることはできない。ということで現状八方ふさがりの状況になってしまっており、市場の流動性悪化に拍車がかかっている。

これを防ぐにはCCPを統合するか、CCP同士の相互接続を実現するか、あるいは極力参加者が偏らないように、すべての参加者が複数のCCPを行き来できるようにするか、清算集中規制をすべての市場参加者に広げるかしかないと思われる。個人的には、各国当局が協力して相互接続するのが最も望ましいと思うが、国の金融システムの根幹にかかわることなので、実現にはかなりのハードルがあるものと思われる。