米国債市場改革の行方

米国債市場改革を巡る議論が活発になってきた。昨年3月にコロナウイルスのパンデミックに怯えた投資家が保有国債の一部を売却しようとした際に市場が混乱したのが直接のきっかけだろうが、実はその前から米国債市場は非常に脆弱な状況にある。何度もここで紹介してきたように、銀行のバランスシート規制、資本規制によるコスト増のため、銀行が国債を持つことができなくなっており、規制見直しを求める声も大きくなっている。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、バイデン政権の高官とともに、国債の取引や規制の方法を変える必要があると述べた。「昨年の春に見られたような、重要な金融市場の深刻な混乱は稀だが、次の大きなショックに耐えられるように、国債市場を補強する方法を考えなければならない」と語っている。

FRBは、既にある程度の措置を講じており、一定のレートで証券を現金と交換することを可能にする2つのプログラムを7月に恒久化したが、これだけでは不十分との意見が多い。

SECのゲンスラー委員長は、自己勘定取引を行っている企業にSECへの登録を求め透明性を高めるを提案している。これは裏を返せば銀行に対する規制を緩めて流動性を高めるというよりは、高頻度取引の会社等の新たな参加者を増やすことによって問題解決を図ろうとしているようにも見える。

ゲンスラー委員長は、CCPの必要性についても力説しているが、これには同感で、CCPで清算した部分について、銀行に課せられているバランスシート規制の対象外とするのが最も望ましいと思う。コスト増やCCPへのリスク集中を懸念する意見も出されたようだが、今の資本コストに比べればはるかに安くなる。銀行に対する規制緩和が望めない現状では、CCPによる清算拡大以外に道はないと思う。

当然実務家サイドは、資本規制の変更が主張している。本来これが最も流動性向上には有益なのだが、民主党政権のもとでこれが銀行規制緩和が行われる可能性は極めて低いと思わざるを得ない。政治というのは本当に難しい。