米国レポ市場の安定性強化策

米国金融安定理事会(FSB)が、ストレス状況下での流動性アクセスの回復力を向上させるための政策をまとめた。予想通り、CCPや取引所のような多数の参加者が直接取引できるようなプラットフォームの活用が謳われている。マージンコールによって年金ファンドが資産売却を迫られたり、投資家の解約請求を受けたりすることが多くなる一方、銀行がバランスシート制約のため取引を受けられなくなっているため、米国債市場が幾度も混乱してきた。少なくともCCPで清算すればバランスシート制約からは一定程度解放されることになる。

FSBは、過去10年間に起きた国債市場の変化によって、ストレス下において流動性が極端に低下するようになったと認めている。そしてそういった状況において流動性を提供すべき金融機関が満足に仲介機能を果たせなかったと結論づけている。結局は銀行がその役割を果たせなかったので、中央銀行がそれを補完した形になっているというのは、個人的な感覚にも合う。

当然のことながら、かといって銀行規制を緩める方向に動く訳ではなく、今回はノンバンクによる仲介機能の拡充を訴えている。ノンバンクが参加してくるとなると、同時に市場監視、モニタリングなどを強化する必要がある。銀行に対するモニタリングはかなり厳格になったが、ノンバンクやその他のレポ市場への参加者に対しても同等の透明性を求めていく必要がある。

米国や英国では、過去10年間に債務債務が約2倍に膨らんでおり、英国でも1.5倍になっている。当然国債市場も大きくなるので、この透明性、流動性向上は急務となっている。そこで今回のCCP案が出てきた訳だが、CCPによる清算は参加者のコスト増から、清算集中義務を掛けない限りは取引が増えない可能性にも触れている。とはいえ、国債現物取引とレポに対して清算義務を課すのはおそらく現実的ではない。だが、個人的には資本規制を考えると銀行にとってはCCP清算にも一定のメリットがあると思っている。ノンバンクによるAll to Allプラットフォームについては、考え方としては正しいのだろうが、これが市場の主流になるにはかなりの労力と時間が必要だ。

それにしても、こうした市場の機能安定化のための検討が真剣に議論されているというのは称賛に値する。政府債務、国債市場の規模を考えると、日本でももっとこうした検討がなされても良いと思う。もちろん、日本でも有識者を集めた会議や検討は多数行われているが、CCP、新たなプラットフォーム、取引報告など、FSBが議論している詳細というよりは、もっと日本の国債マーケットはどうあるべきかといった大所高所にたった意見が中心であり、かなりハイレベルな印象がある。検討会に参加している委員の役職が高すぎて現場から離れているのからなのだろうか。もっと日々実務に携わる専門家が細かいところまで議論をする場があっても良いかもしれない。