GSがFRBのストレステストで資本増強の必要性が示唆されていたが、その後の不服申し立てを受け、FRBが修正を受け入れることとなった。早速GSからはその旨のアナウンスメントが出されていた。ストレステストの結果が公表された際には、GSはStress Capital Buffer(SCB)の予想外の増加を受けて自社株買いを抑えるとしていたが、これで資本余力が生まれることとなる。SCB自体は6.4%から6.2%に引き下げられたとのことなので、その影響は小さくない。
FRBは、ストレステストの透明性を高める狙いもあり、2020年からこうした申し立てを受け付けるようにしてきた。しかし、これまで9件の申し立てはすべて否認されてきたが、今回は決定が覆る初めてのケースとなる。
当初結果では、重大なストレスのかかった状況で$40bnの損失が出るという計算だったが、GSとしては、すでにリスクを処理していた消費者向け融資部門のグリーンスカイについての追加損失について反論をしたようだ。FRBとしても、処理をほぼ終えていたものに対する損失だったので、反論しにくかったのかもしれない。
通常大手米銀に対して要求されるTier1資本には、4.5%の最低基準額、ストレステストの結果も踏まえた最低2.5%のストレス資本バッファー、そしてグローバルにシステム上重要な銀行に対する追加チャージがかかる。近年はこのSCBとG-SIBにかかる追加チャージが米銀の軽系を大きく左右するようになってきている。
今回の修正によって、GSの最低ティア1資本は13.9%から13.7%へと緩和される。JPMが12.3%、BoAが10.7%、Citiが12.1%であることを考えるとやはり証券系のGSとMS(13.5%)に対する要件が高くなっている。この要件を満たせないとボーナス支払いに対する制限や配当制限がかかるため、その影響は大きい。
配当制限はまだしも、ボーナス制限が大きな問題になるというのが、日本との大きな違いなのだろう。しかしFRBの文書を読むと反論を受けてきちんと検証した形跡が伺われ、当局と銀行が健全な議論を闘わせている様子が伺われる。資本規制の重要性からすると、今後もこうした緊張感のある議論が続いていくのだろう。