理想のカウンターパーティーリスク管理とは

欧州ECBがカウンターパーティーリスクに関するガバナンスとリスク管理についてのコメント募集を行っている。募集が始まったのが6/2で、期限が7/14なので、比較的短期間の市中協議となるが、内容的にはそれほど大きな意見の相違がある内容でもなさそうだ。

対象となっている報告書はSound practices in counterparty credit risk governance and managementというもので、カウンターパーティーリスク管理のベストプラクティスのような形となっている。カウンターパーティーリスク管理のガバナンス、リスク管理手法、ストレステスト、WWR、デフォルトマネジメントなどの項目について、現行のベストプラクティスがまとめられている。

ガバナンス面では3線管理の重要性が強調されている。フロントオフィスの1st line of defenceと、独立したリスク管理部門である2nd line of defence、監査を行う3rd line of defenceのガバナンスと役割分担の重要性が強調されている。大手銀行はフロントに専門のカウンターパーティーリスクチームを設置しているものの、あまり効果を発揮していないというコメントも見られる。CCRに関する詳細な報告がシニアマネジメント層に報告されていないとも書かれている。マージンコールを始めとする詳細なリスク管理に対するトップマネジメントの関与不足も指摘されている。

確かに担保管理プロセス、WWRの管理、ストレステストなど、すべてのツールは揃っているが、トップマネジメントの関与があるかというと、このレポートがコメントしている通りなのかもしれない。定期的にリスク管理委員会などで報告はなされるが、トップマネジメントが、この深く突っ込んだ質問をしてくることは少ないのだろう。本来は、複雑でかなりの細部にわたるリスク報告書を平易な言葉で報告をしていくことと、CROだけでなくトップマネジメントがリスクに対して関心を持つことが必要なのだろう。

とはいえ、この10年の間にリスク管理に関しては大きな進歩が見られているのも確かである。以前であれば、ビジネスを推し進めたい現場と、それを抑えようという2線が対決するのが当然だったが、最近では、2線が承認した取引でさえも、ビジネスサイドのトップが否認するというケースもあるようだ。特に海外大手銀行では、アルケゴスのような大きな損失が発生すると、現場のマネジメント層も責任を負うことが増えてきたため、収益サイドに偏っていた現場のマネジメントのフォーカスが、若干リスク寄りに変化している。

最も効果を発揮しているのは、こうした損失が発生した時に現場のマネジメント層が個人的に責任を負うというプラクティスである。これは当初英国で始められた規制だが、米国でも似たような議論が出始めている。この場合の「責任を負う」とは、過去に支給されたボーナスが没収される可能性があることを意味する。こうなると、いくら収益が重要といってもリスクを気にせざるを得なくなる。だが、これが正しいリスク管理なのかどうかはよくわからない。

退職を控えたマネジメントなどが、すべてのリスクを避けるという行動にでることもありうるからだ。一方転職してきたばかり、着任したばかりのマネジメントにはこうしたインセンティブがなく、両者のせめぎあいとなる。だが、これが本当に金融機関の経営として健全と言えるのだろうか。やはり個人の生活とビジネスディシジョンは別に分けておいた方が良いと思う。そもそもこうした規制が海外で導入されるのは、上級管理職の報酬が極端に高すぎるからなのかもしれない。

とはいえ、現場のマネジメントがリスクに注意を払うのは良いことである。日本の場合はリスクはリスク管理部門、ファンディングコストは財務部門、資本コストや規制コストは企画部門のようにサイロに分かれていて、現場のトレーダーが資本コストやファンディングコストを気にしながら取引をすることが少ない印象がある。海外モデルが正しいとは言えないが、海外と日本の中間のようなところに正しい姿があるような気がする。