決済期間短縮がシステム投資を拡大させる

ここ数年で決済期間の短縮がかなり進み、米国では株式と社債の決済期間のT+1化に向けて準備が進められている。日本でも2018年から国債の決済期間がT+1になり、GCレポのT+0化も検討されている。米国でT+1化の話が進み始めたのは、2020年のGameStop株騒動によるものだが、急速な株価変動によって生じた証拠金が払えなくなり、一時的に取引が停止された。これは決済期間である2日間の証拠金をカバーする必要があったためであるが、これが1日に短縮されればリスクが低下し証拠金が少なくなるという理由によるものである。

実は米国の決済期間は、大昔はT+1だったが、取引量の増大に対応するため、一時はT+5まで長期化していた。すべてを手作業で処理していたためオペレーションが追いつかず、決済期間が長期化していたのだが、テクノロジーの進歩によって昨今はこれを究極まで短縮するという試みがなされている。日本ではT+3から徐々に短縮化が図られているが、リスク削減というよりは、グローバルスタンダードに併せようという側面が大きいように思う。テクノロジーの進歩によって自動化と省力化が進む海外と異なり、ITコストより人件費が安いからか、手作業で必死に短縮化を目指しているような印象もある。顧客の要望に合わせたカスタマイズをするため、そもそも自動化が困難な事務プロセスが多いことも障害になっている。

海外の事務フローは、STPガイダンス等もあって、自動化とSTP化が当局主導で進めれており、ここに特殊なカスタマイズされたプロセスを組み込むのは不可能になっている。株式と社債のT+1化に向けて更なるIT投資が増えており、人海戦術で対応しようというところは少ない。メインフレームコンピューターによる一日一回のバッチプロセスを行っているところは少なくなり、1時間ごとのバッチに移行したり、ほぼリアルタイムでのデータ更新が主流になりつつある。車の設計変更を、周期的なものから随時変更にしたテスラのような変革が金融業界にも起きている。

数多くのFintech企業が生まれ、こうしたPost Tradeのプロセスを支援するサービスを拡大させている。移行時期については来年の5月か9月で議論されているが、いずれにしてもあと1年ちょっとでT+1化が実現されることは間違いない。期限まであまり時間がないことから、業界ではかなりの混乱がみられるが、もう後戻りはできないことは理解されているので、世界的に更なるIT投資が加速することになるだろう。

日本でも海外並みにIT予算を増やせるのだろうか。ある程度までは手作業でついていけるかもしれないが、最近の技術進歩を考えると、T+1の次はT+0、リアルタイムへとシフトすることも考えられる。日本でもこうした流れに併せてシステム投資を拡大しないと世界から取り残されてしまう。