欧州の証券決済T+1化

先日米国とカナダの決済期間短縮化について記事を書いたが、欧州や英国では議論が割れているようだ。EUでは2カ月前の10月に議論が始まったばかりであり、未だ方向性についてのアナウンスは確認できていない。

英国については、タスクフォースが作られ議論が続けられているが、報道によるとかなり反対意見も多いようだ。一応今月末までにProgress Reportを公表し、来年末までに最終化の予定となっているようなのだが、今の雰囲気だと計画は後ろ倒しになりそうだ。どうやら短縮化すること自体に反対する意見は少ないようだが、その実施時期については慎重な意見が目立つ。

そもそもBrexitによって欧州規制とは一線を画した自由な規制の導入が可能ということで、エジンバラ改革と銘打ち国際金融都市ロンドンの地位向上を模索していたはずなのだが、ほとんど大きな進捗が見られない。銀行やアセマネ業界は2026年春ごろを目途に準備を進めるべきとしているようだが、バックオフィスのシステム改訂が間に合わないという意見が多い模様だ。このままだと今月に出されるProgress Reportでは、時期が明示されない可能性が高い。

その他の国ではインドが短縮化を進める方向で動いているが、日本ではあまり議論が盛り上がらない。もともと事務フローの自動化や、期間短縮に関しては世界に類を見ないくらいに慎重なところがある。海外のように短縮はするがフェイルが多くなるという慣行が、まじめな日本人にはなじまないのかもしれない。ただし、オペレーションの自動化、システム化、AIを使った効率化が急速に進む中、日本だけが後れを取るとグローバルな資金の流れから取り残されてしまう危険性もあるので、海外の動向を見ながらキャッチアップしていく必要があるだろう。