担保需要の高まりと資金融通プロセスのオートメーション化

担保として拠出しなければならない流動資産に対するニーズが高まっているというペーパーがCapcoから出されている。今回の分析では推定$100bnを銀行やバイサイドの投資家が調達しなければならないという結果になっている。証拠金規制で当初証拠金の対象となる会社が今年の9月と来年の9月に増えていくことから、相対取引のIMニーズが高まり、清算された取引についてCCPに拠出するIMや清算基金ニーズも高まる一方である。

このコスト増により一定の方向の取引が困難になり、取引流動性が悪化するという事象も発生している。こうした流動性ニーズの高まりも米国短期金融市場の混乱につながっているのだろう。これ以外にも銀行はストレステストに備えて十分な流動性を確保しておかなくてはならず、何も使う必要もないが手元に置いておかなければならない。しかも国債ではなく現金が必要だったり、いざとなれば中央銀行貸出があるにもかかわらず、こうした貸出に頼る形にストレステストプランは認められない。もっとも米国で今月話題になっているFRBの方針転換(米国債を連銀準備預金と同等に扱うよう検討)は大きな前進である。

担保拠出の期限も以前は日本では3日の猶予があったが、最近は1日が普通になってきており、海外ではその日のうちに担保をやり取りするT+0決済も増えてきている。この負担を嫌うがために無担保にして取引をするバイサイドもある。日本の証券自己資本比率は海外に比べるとリスクに応じたものになっていないため、特にファンドとの取引を信託銀行経由で行う場合などは資本コストが大きくなり、バランスシートコストもかかる。通常はこうした取引を銀行間でヘッジするが、そちらは有担保かつ短期間でに担保授受となるため、厳密に計算すると全く割に合わないが、日本ではこうしたコストまで細かくプライスに反映させる慣行がないため、金融機関が腹切りで赤字を垂れ流しながら取引をするということになる。

また、担保決済や時価情報、その他様々な顧客要望に応えるコストもあるので、日本のオペレーションの負担は世界で類を見ないほど高く自動化も困難である。海外にオペレーションを移すのも日本語サービスの問題で限界がある。こうしてなるべく日本から撤退したいという本国の意向と日本で継続したい日本の支店、現法との闘いが永遠に続く。おそらくこれは過剰サービスを続ける金融機関が倒産し、数が少なくなるまで消耗戦が続くのだろう。

paypayなど即時決済ができるこの時代に、担保授受に2日欲しいとか3日かかるというのも理解に苦しむが、この決済のところを改善すれば、もっと効率的な取引が促進され、取引流動性も上がるのではないだろうか。為替の世界でもドルは通常NY時間での決済なのだが、日本時間にドルが欲しいとか言われると、数時間のファンディングが必要になる。これくらい何でもないと思われているのかもしれないが、厳密にここにもファンディングコストがかかる。CLS等の決済ができれば問題ないのだろうが、日本ではこれも遅れている。

あらゆるコストを犠牲にしてまで顧客サービスを充実させるというおもてなしの文化も良いが、このままでは海外との競争についていくことはできない。手数料競争激化もあり自動化を海外並みに進めていく必要性は誰もが理解しているのだが、すべてに完璧を要求する「お客様は神様」文化も変えていかなければならないのかもしれない。ただ、一部には、あまりにも日本の給料が安くなってきている上、サービスの質も高いので、機械化するよりは日本の安い労働力を活かしたらどうかという議論まで出ているのは皮肉ではあるが。