市場行動はコントロールできるのか

EUR Swapを欧州域外で「過度に」クリアリングすると資本コストを上げるという案がEBAから出ている。どの程度なら「過度」といわれるかが明確になっていないため、当局サイドにかなりのFlexibilityがあることになる。つまり、英国のLCHでクリアリングする取引が大きいと見なされると余分に資本コストがかかるため、Eurexに移さなければならない。Brexit以降、欧州当局としては、何とかEURの取引を英国から欧州に移そうという努力が続けられている。

自国というか自分の地域を優先しようというグローバルな動きはなかなか覆せないようだ。昨今の地域間の争いや戦争もこれに拍車をかけているのかもしれない。欧州当局はこれまでも何度も英国から欧州へのビジネスの移行を進めようとあらゆる手立てを講じてきたが、未だにLCHの地位は盤石である。当然流動性のあるところで取引をするのが金融の常なので、この優位は揺るぎそうもない。資本規制にまで踏み込むとさすがに影響が出てくるのかもしれないが、これは欧州銀行が流動性にアクセスできないことを意味する可能性もあり、米銀や英銀に対する域内金融機関の弱体化を招く可能性もある。

こうしたゆがみを放置するとマーケットは思わぬ方向に暴れ出す。その意味では、日本のCCPでもCCP Basisの拡大というリスクを抱えている。最近は日銀の金融政策変更を予想する海外投資家が金利上昇を見込んだ取引を増やしている。このような環境下では、LCHにおける円金利が上昇し、JSCCの円金利が上昇しないということが起きる。これがCCPベーシスの拡大につながっているのだが、円スワップ金利一つとっても二つの金利が存在しているのである。

このまま10年金利を抑え続ければ、国債金利は一定でもスワップ金利が上昇する。JSCC金利の方が上昇が抑えられるかもしれないが、LCH金利だけが上昇する可能性がある。また、10年金利を参照するスワップションの買いもかつてないほどに活発になっており、ボラティリティの上昇は既にYCCの解除を完全に織り込んでいる。一般に見えやすい指標としては、ドル円の上昇リスクもくすぶっている。

つまり、無理して今の政策を日本だけが続ければ、アセットスワップの拡大、LCH/JSCCスプレッドの拡大、円金利ボラティリティの上昇、円安といった動きになる。これが他の市場に波及して、ドル円の通貨ベーシスの拡大、インフレスワップの上昇、TIBOR/OISの拡大と、広範囲に影響が拡大していく。

やはり、ここまで相互連関が強くなった金融市場において、無理のある政策を続けると、どこかで歪みが発生し、最終的に大きな市場変動につながるリスクは常に考えておかなければならないだろう。