円は安全資産ではなくなった

ここのところの円安で、マーケットでは円は既に以前のような安全資産ではなくなったという声が大きくなってきた。これまで何かリスク回避的な事象が発生すると円が買われ円高になるというのが定石だったので、リスクオフに備えたヘッジとしてドル円ショート(円買い)を持っている投資家が多かったのだが、今回はこうした投資家は損失を被っており、損切に動いているように見える。

このブログでも従来のような円高が起きなくなっているという指摘を昨年からしてきたが、ユーロなど円以外のキャリー通貨が生まれてきたからという理由によるものだったのだが、今回の円安はやはり日本に対する不安という面が大きいように思う。それを裏付けるように、 今回の円安を引き起こしたフローは東京時間というよりはNY時間、LN時間で起きている。

FTにも書かれていたが、ウィルスの広がりとGDPの下落等の経済指標の悪化が円安を誘発しているという分析が支配的になっている。この状況下では日銀の更なる金融緩和の可能性もあるので、それが円安を加速させるという事情もあるだろう。日銀としては、長期金利は下げたくないものの、緩和をしなければならないということで難しいかじ取りが迫られる。これもあって黒田総裁の金曜のコメント(金利のターゲットの短期化)という発言につながったのかもしれない。そうすると10年をゼロとしていた金利のターゲットが例えば5年でゼロあるいはマイナス10bpとかになるのだろうか。

あとはFTが指摘しているように世界中の投資家が3月の年度末に向けたGPIFのリバランスに注目している。信託勘定が1月に2兆円の外債を買い越しているというデータも話題になったが、GPIFのリバランスを受けて他の投資家も外債投資に流れているという説だ。

クレディ・スイスの世界の富に関する報告書も注目を集めたが、2000年末から昨年半ばまでの間に世界の成人1人当たりの資産保有額は2.3倍になったのに対し、日本はわずか1.2倍となっている。このままではますます日本のプレゼンスは低くなってしまう。円安になればさらにこの差は広がるが、未だに円高は悪という意識がはびこっている。確かに自動車会社等の輸出企業にとって円高は厳しいのかもしれないが、本当に円高が悪なのかどうかはしっかりと分析をしてみる必要があるだろう。