内部モデルの終焉

銀行の市場リスクに関する資本計算について、米国では既に内部モデル(IMA)から標準法やストレス資本バッファへとシフトしているが、欧州でも同様に内部モデルをあきらめる動きが目立ってきた。

欧州では、2020年2月に公表されたECBの調査結果において、内部モデルの採用をあきらめる金融機関が最低40%程度はいるだろうとされていた。それから1年半ほど経ったが、状況はかなり加速しているようである。当該サーベイでは、20%の金融機関がすべてのトレーディングデスクについて内部モデル承認を申請するだろうとされていたが、それより少ないとなると、ほとんどすべての銀行が標準法へ移行したとしても不思議ではない。一部のトレーディングデスクのみ内部モデルというところもあるだろうが、モデル承認やそのメンテナンスを考えると、内部モデルは終焉を迎えつつあるといっても良いのではないだろうか。

再度遅れる可能性はあるものの、欧州のFRTBの導入は2025年1月となっているが、その頃には内部モデルは過去の産物になっているかもしれない。内部モデル承認を得るには、十分なデータをもとにバックテストなどを行わなければならない。このために多くの人材を採用し、様々な分析を行ってきたが、72.5%のOutput Floorや申請の煩雑さを考えると、完全に標準法に移行してしまった方が得策だろう。本来リスク管理のあり方としては、各金融機関でリスクモデルを充実させるというのは望ましいことなのだが、ここまで当局の内部モデルに対する信頼性が失われてくると、あきらめざるを得ないだろう。

日本では、海外に比べるとモデルやリスク管理に優秀な人材が集まるのだが、こうして海外がすべて内部モデルから離れていくなか、日本だけがこれにリソースを投入し続けていると、非効率になってしまうかもしれない。少なくとも標準法やストレステストの充実は進めておいたほうがよいだろう。