ターム物RFRへのシフトにストップがかかっている

トヨタのオートローン証券化がデリバティブ業界で大きな話題になっている。もともとARRCのベストプラクティスでは、ターム物SOFRの利用は、ターム物を参照する資産をヘッジするときにのみ限定的に使われるべきとの立場を崩していない。そして、オートローンが固定金利なのになぜTerm SOFRを使うのかという疑問が呈された。

業界では、SOFRの流動性が格段に上がってきたことから、そろそろターム物の利用を拡げても良いのではないかという期待があったのだと思われる。ARRCからも、正式にTerm SOFRを認めるというアナウンスが昨年夏にあったため、市場参加者の間でも油断があったのかもしれない。ARRCの11月9日の議事録によると「The ARRC expressed concern about some recent trends, such as securitizations using Term SOFR when they did not have underlying Term SOFR assets.」と結構強めに書かれている。今回ターム物を巡る業界のの期待が完全に覆されたので、しばらくは、トヨタのケースのようなTerm物の利用は控えられることになると思われる。早速別の会社がABSの証券化でターム物の利用を断念している。

ローンのフォールバックがターム物だったことから、日本ではターム物に対するアレルギーは少なく、TORF参照の仕組債なども少しずつ取引されているようだが、米国ではTerm SOFRを大々的に使うのはまだ難しいようだ。流動性が米国に遠く及ぼないが、ターム物の利用を推奨するコメントが出る日本とは大きく状況が異なる。

当初は、LIBORのような前決め金利にあまりにも慣れていたため、前決めのタームRFRを使いたいというニーズが高かったのだが、実際にやってみると、特に海外では後決めでも何とかなるということが明らかになっている。

日本でも支払いを若干遅らせれば後決めでも何とかなるのではないかという気もする。いずれにしても、日本については、流動性がない中金利指標が多く、ベーシスリスクも多い。TONA、TIBOR(しかも統合するまではDとZ)、TORF、TONA先物といった金利指標の他、JSCC金利とLCH金利、TIBOR6/3といったベーシスリスクがある。ニーズがあれば何とかそれにカスタマイズして応えようという日本文化の象徴なのだろうか。