ストレスキャピタルバッファが資本規制の中心に

GSの投資家向けプレゼンテーションが公表されているが、資本コストにかなりのフォーカスを置いている点が印象的だ。当然部門ごとのビジネス戦略にも触れているのだが、効率性を追求し、資本コストを抑えながら経営をしていくという方向性が明確に伝わってくる。資本や効率性がAppendixのような扱いを受けている日本とは対照的だ。

P14において、最近導入されたSCB(Stress Capital Buffer)を現状の6.4%から5%に減らすというプランが示されている。G-SIBチャージが2.5%から3%、3.5%と上がっていくのに備えるということだろうか。既に自己資本比率規制への対応策が様変わりしてしまったような印象を受ける。驚くべきはこうした資本要件の厳格化にもかかわらず14-16%のROEが達成できているという点だ。

FRBが公表している米銀の資本状況を見ると、SCBは最低の2.5%から7.5%までと幅広い。バーゼルで定められたCCB(Capital Conservation Buffer)の2.5%に比べると3倍以上になっているところもあるということである。これに最低水準である4.5%を加え、大手銀の場合はさらにG-SIB Surchargeが加わり、合計で10%を超える自己資本が求められる。そしてこの資本に応じてROEを上げていく必要があるので、ビジネスのあり方がかなり変わってくる。

SCBはストレステストに基づく指標なので、市場に大きなショックが起きたときにも耐えられるということが重要である。当然ながら市場のショックが起きた時に損失が出るビジネスを減らしていかないと、ROEが低下してしまう。資本要件を満たせないと配当やボーナス支払いに制限が加わるので、真剣にコントロールせざるを得ない。

それにしても海外ではSCB、CCB、CCyBなどの話題で持ちきりなのだが、日本ではあまりこうしたことを話している人は、一部の専門家を除くと極めて少ない。今後は日本も同様の基準を重視していくようになるのだろうか。