コモディティ価格に対する欧州の当局介入

EU当局が天然ガス市場についての介入を強めている。あらゆる分析ペーパーを見てみても、かなり力を入れて分析している様が伺われる。世界中のリスクマネージャーも日々TTF/JKM/HHの価格を確認していることだろうが、これがかなりのマージンコールの混乱を引き起こしている。適格担保を広げるとか価格キャップを設けるといった話が議論されているが、今回は欧州の代表的価格指標であるTTFから別の指標にシフトするという話がEU当局から出ている。

LIBORからの移行ができたということは、当局の後押しがあれば市場をシフトさせることは可能なのだろうが、現状ではこれに変わる指標が見つからない。現状は欧州、アジア、米国のマーケットが結構独立して動いている。今はまだ時期尚早であるが、アジアにおける天然ガスの需要が年々高まっていることを考えると、今度はJKMが代表的指標として使われるようになるかもしれない。しかし、最近はJKMもかなり変動が激しくなっている。

他国では、天然ガスの輸入業者に対して政府保証をつけて市場の安定性を確保しようとしているという話も報道されていたが、これは日本にとっても重要な問題だと思う。欧州のようなコモディティデリバティブに関して提言を行うのは日本では経産省になるのだろうか。日本の場合は金融機関といよりは商社が重要な役割を果たしており、信用力が高く、エンドユーザーも大企業が多いので、それほど大きな問題にはなっていないのかもしれない。特にCCPの利用が少なく、相対取引が多いために、欧州のような当初証拠金の問題は少ないだろう。

とは言え、天然ガスが電力やガスの価格に影響を与えていることを考えると、ヘッジニーズが増えてくる可能性がある。今度何か危機があったときに、欧州は準備万端だが日本が混乱に陥らないよう、デリバティブ市場についての分析、提言をする機能を拡充していくべきなのかもしれない。ロシアの影響が軽微だからということなのだろうが、海外と日本の天然ガスへの関心度の違いが顕著なので気になるところである。