コモディティはCCPで取引すべきか?

EU当局がエネルギー関連商品の集中清算についてペーパーを出している。ロシアのウクライナ侵攻に際してコモディティ価格が急騰したことにより、巨額のマージンコールがかかり市場の安定性が危険にさらされたことが契機となって、様々な議論が行われている。

エネルギー関連会社のマージンを別管理したり、エネルギー商品の清算基金を分別したり、エネルギー関連会社が直接CCPに参加することを制限したりといったアイデアが出ている。

ドラスティックな意見とは承知しているが、ここまでくると個人的には、コモディティ取引はCCPで清算すべきではないように思う。LMEのニッケルや、オランダTTFなど、誰もが予想しなかった市場の急騰に備えてマージンを確保するのは不可能である。CCPとしては、当初証拠金モデルを変更してより保守的な当初証拠金(IM)にしたいだろうが、あまりにIMの負担が増えてくると、そもそもヘッジをすべきかどうかという問題になる。そこまでの負担があるのなら、ヘッジしなくても同じ、またはヘッジ量を減らした方が経済合理性があるという議論だ。またCCPで取引せずに相対で取引すればよいということになる。

エネルギー関連会社を直接参加者から外して、銀行経由にするというアイデアについては、おそらく銀行が合意しないだろう。そこまでのリスクを取って顧客にクリアリングビジネスを提供するインセンティブは、昨今の規制強化によってなくなりつつある。銀行内部のリスク管理上もCCPに対するリスクについては注視しなければならなくなっている。別途EUでは銀行の資本強化のニュースも出ているが、リスクを抱える上に資本コストが上がっているので、普通に考えれば、クライアントクリアリングサービスからは撤退した方が良い。

全ての商品をCCPで清算して、カウンターパーティーリスクを完全に無くすのは無理なのではないかと思う。金利スワップ、レポ取引などクリアリングが馴染むビジネスもあるが、コモディティは非常に難しいというのが個人的な感想だ。ではどうすればよいかというと、昨日書いた米国債クリアリングの記事と同じように、決済や、取引のブッキング、時価評価などはクリアリングと同じように行い、債務負担だけはしないという方法だ。CCPが債務を保証しないので、マージンは当事者同士で決める。大手の参加者はSIMMを使っておけばよい。マージンが足りなければ損失を被るが、CCPの清算基金が使われるわけではなく、CCP破綻もあり得ない。

金利スワップやCDSにおいてはリーマンのような巨大金融機関破綻時のシステミックリスクを避けるためにCCPが重要な役割を果たしているが、コモディティについては、巨大銀行が原因で市場が混乱する可能性は低く、エネルギー関連会社の破綻に止まるはずだ。これを金融業界全体で支えようという考え方自体に無理があるように思う。現に高いマージンを避けるために、CCPから取引を銀行との相対取引に移す動きがみられている。マージンのコストが高くなりすぎたり、エネルギー関連会社を直接参加者から排除すれば、この動きが加速するだけだと思う。かといって金利スワップのように清算集中義務をかけるのも現実的ではない。

基本的には集中清算支持派だったが、最近の混乱をみると、何でもかんでもクリアリングというのは正しい方向性ではないように思うようになってきた。ただし、こんな意見はほとんど聞かれないので、当局サイドとしてはあくまでもクリアリングの頑健性を高めようという方向に動くのだろう。そしてほとんどのエネルギー関連会社がCCPを使わなくなった時に初めて、このような議論が盛り上がることになるのかもしれない。