アルケゴスを受けた金融庁監督上の留意点

金融庁からアルケゴスの教訓から学ぶ、監督上の留意点と対応が公開されている。既にCSレポートでも触れられている点が多いが、英米当局とも連絡を取り合って情報収集をしているのは重要である。個人的に重要だと思ったのは以下の留意事項である。

  • 経営陣の関与
  • 営業部門やリスク管理部門の役割と責任の明確化
  • 許容するリスク量を明確に定め、それに収まるようなリミットを設定すること
  • 海外子会社を含めたグループ内のリスク管理
  • 必要に応じて取引規模を示すクロスの数値などを活用した複眼的な管理
  • 誤方向リスクを適切に考慮すること
  • ストレステストを活用した能動的な管理
  • 運用戦略、取引規模、レバレッジの程度、参照資産の集中度を管理すること

特に日本では経営陣の関与ということが強調されることが多いような気がするが、あまり経営トップが一つ一つのリスクについて詳しくないという印象があるのかもしれない。

許容するリスク量を何で決めるかも重要である。しかし、今回のコモディティ価格急騰に見られるように、許容するリスク量を決めていたとしても、価格変動が激しすぎるためにリスク許容度を超えてしまうことも多い。

グループ内のリスク管理態勢については、CSのレポートでも問題点が指摘されていた。日本の場合は拠点によってリスク管理の方法やポリシーが異なるということがあるからか、親会社から海外子会社、海外子会社間における適切な監視、管理、牽制、連携が機能するための態勢整備と実効性の確保の重要性が強調されている。

取引規模を示すグロスの数値などの活用した複眼的な管理は確かに需要で、その後の誤方向リスク、ストレステストなどを用いながら多面的にリスク管理をしていく必要がある。最後のリスク集中は今後極めて重要になってくる。ニッケル暴騰で有名になった中国の生産者の例のように、市場のどこかにリスクが集中していると、それが極度の市場変動を引き起こすことが明らかになり、IMFなどもこうしたリスクをきちんと把握するようにと提言していた。

監督上の留意点ということなので、今後の金融機関検査や監督において、おそらく確認が求められることになるのだろう。いずれも至極まっとうな論点なので、適切に対応していくことが求められる。