アジアの金融ハブはどこになるか

この2月に香港を脱出した人が7万人を超えたと報道されている。人口の1%に相当するのでかなりの人数だ。一時的な退避も含まれているだろうが、シンガポールの学校への問い合わせが増えているとのことなので、長期の移住を視野に入れている人も多そうだ。やはり感染時に子供から引き離されるというのは辛い。EU籍に限って言うと既に10%が出国したとのことだ。

行先としてシンガポールが多いのは当然だが、ドバイ、ポルトガル、スペイン、南イタリア、タイへ移動する人も多いと報じられている。その他、オーストラリア、イギリス、アメリカ、カナダという候補も上がっているが、なぜか日本がない。

普通に考えるとシンガポールがアジアのハブとして発展するだろうというのが自然な考え方だが、シンガポールも安泰というわけではなく、色々と問題は出てきているようだ。Expat向けのサーベイでもかなりランクが低くなっている。シンガポールが力を入れてきたのはヘッジファンドマネジャーのような富裕層である。ビザの取得はますます難しくなり、帯同する配偶者がWork Visaを取って仕事を見つけるのも困難だ。確かに富裕層を呼び込めば金融が栄え、それに付随するシステムや各種サービスが必要になる。それが全体としての産業を盛り上げていくという狙いなのだろう。

ドバイも同じような戦略で、何と言っても税金がかからないというのは魅力だろう。他にもリモートワーキングビザの発給といった政策によって人を惹きつけようとしている。ビジネス的にも規制がそれほど厳しいわけではないので、アセマネファンドが一部移っている。とは言え、ドバイにおけるビジネスを求めてと言うよりは、ビジネスのやりやすい環境を求めて人が流入しているだけで、長期的にハブとなり得るかはよくわからない。

ヨーロッパでもポルトガルやイタリアでは当初数年間は外国からの収入を無税にするといったインセンティブを設けている。ポルトガルの人口の7%が海外からということだ。

香港の人に聞いてみると、海外から入ってきたExpatを除くと、実は香港にとどまりたいという人が多い。特に中国とのビジネスを考えればシンガポールは考えにくいという答えが返ってくる。日本は?と聞いてみると、治安も良くて食べ物もおいしいから良い国だよね。といわれるが、移住しようとまでいう人は皆無に等しい。一部日本に移ってくる人もいるが、配偶者が日本人だったり、以前日本に住んでいたりと何らかのつながりがある人に限られる。逆に言うと、日本のことをよく知っている人からすると、日本が最大の候補になる。知らないからこそ敬遠されているような気もする。

もう少し突っ込んで聞いてみると、言語の問題はさておき、あまり外国人が歓迎されない雰囲気があるとのことだ。規制もよく分からないものが多く、手続きも非効率で、家探し、学校探しができるとは思えないとのことだ。実はそんなに大変なことではないのだが、確かに役所に印鑑証明を取りに行ったり、家を借りる時に住民票を提出したり、彼らにとっては不可能なタスクに思えるようだ。日本で携帯一つ買うのにも様々な複雑なプランがあり、理解するだけで精いっぱいになってしまう。よほど現地の人の助けを借りないと一人ですべてのセットアップをするのは無理だと思い込んでいる。しかも税金はかなり高くなるのであまり日本に移住しようというインセンティブはない。

国際金融都市構想が叫ばれて久しく、様々な分野で改善が見られ始めている。しかし、やはり日本に来るかといわれると、躊躇してしまう人がほとんどのようだ。