金融取引処理の自動化と標準化

金融の世界ではコスト削減と透明性向上のために、様々な標準化の努力が続けられている。日本にいるとあまり目立たない動きのように感じてしまうが、海外では、業務プロセスが毎年のように変更されていく。デリバティブ取引のISDAの契約交渉は電子的に交渉をサポートするISDA Createがあり、データの標準化にはCDM(Common Domain Model)がある。そして昨年この両者の統合が可能になったことにより、契約と業務処理がシームレスにつながり、さらなる自動化が可能になった。

契約交渉の過程で合意された条件を、リスク管理システムや取引データ管理システムにそのまま流し、自動的にデータ処理ができるようになる。以前は、ISDA契約を一つ一つ読み込み、Threshold、適格担保などのデータをシステムに手入力していた。そして、このデータが間違っていると、XVAのプライシングミスが発生して損失につながることもあった。個人的にもこのデータ入力と確認作業を担当したことがあったが、間違いのないよう複数のチェックを入れたり、外部弁護士にレビューを依頼したりとかなりのコストをかけてデータ化したのを記憶している。

これらの自動化により、Archadie Softなどの担保管理やその他のサービスプロバイダーは、ISDA Createによって交渉が行われた契約条件を簡単に取り込むことができる。オンライン上で契約交渉を行うと、そのデータが自動的に取得、保存され、あらゆる目的に使用できるようになる。特に一つのISDAマスター契約にファンドを追加していく海外アセマネの取引に関しては、事務効率がかなり向上した。

これらのデータを標準化しておけば、当局向け取引報告、IM最適化、コンプレッション、Novationなど様々なポストトレード処理の効率性が高まるだろう。特に資本やファンディングコストなどの効率性を意識しながら金融取引を行うことが重要になっている昨今においては、こうした流れに後れないようにしておくことは非常に意味があることである。

これまではこうした動きに国内勢が後れを取ることが多かったが、金融機関がますますシステム産業化していく中、これを避けて通ることはできないだろう。