Eurex EUR Swap Outright Curveの公表開始

BGCがEurexで清算されるEuro Swapレートカーブの公表を開始した。これまではLCHのカーブにスプレッドを加える形で取引が行われていたが、これがダイレクトにEurex レートで取引できるようになる。

これによって現在10年で3-4bpある、EurexスワップとLCHスワップのCCPベーシスがなくなるかもしれないという意見も聞かれるが、Eurexのメインユーザーである欧州リアルマネーは固定受けのニーズが多いため、結局フローは偏ったままになり、特にベーシスには変化はないものと思われる。

欧州当局者としては、EURスワップが、英国のLCHにリンクされたLCH金利+αでQuoteされるのは望ましくないのだろうが、この一連の自国保護政策がうまくいくかどうかはよくわからない。ある程度は無理やり欧州に移行することはできているが、結局米国や日本などの市場参加者からすると、わざわざ流動性に劣るEurexを使う必要性は低い。

国内プレーヤーのプレゼンスの大きい円とは若干様相が異なる。日本ではJSCCのシェアが7割を超え、市場参加者は流動性の高いJSCCプライスで取引をすることを選好している。日本円金利スワップについては、海外の市場参加者がJSCCに参加したいという声が強く、LCHに対する制限をなくしたからといって、JSCCの優位は変わらないものと思われる。

CFTCが米国顧客のJSCC参加に前向きになりつつあるコメントがいくつか見られるが、同時にLCHにも門戸開放し、バランスの取れた透明性の高い円金利スワップマーケットが構築されるのが、市場参加者としては最も望ましい。やはり人為的に市場の流れを操作しようというのは、健全な市場育成の観点からは望ましくないものと思われる。

ノンバンクに対する中銀特別融資

英国中銀が銀行以外のノンバンクセクターに対する緊急融資プログラムを創設する予定だと報道された。これはコロナショックなどの市場ショック時の一時的措置ではなく、恒久的措置として導入される予定だ。

NBFI(Non Bank Financial Intermediation)という新たなセクターの存在感が増し、金融危機が銀行以外から発生するのではないかということでNBFIに対する規制強化が叫ばれて久しいが、今回はNBFIにも銀行と同じようなショックアブソーバーを用意しようというものだ。銀行に資金を供給するだけでは危機を抑えることができないので、それ以外にも直接資金を供給しようということだ。

ここでいうノンバンクとしてはICPFsが想定されている。個人的にあまり聞いたことのない言葉だったが、Insurance Companies and Pension Fundsの略のようだ。つまり生命保険会社と年金基金、従来のリアルマネーがこれに該当する。まずはICPFsから始めて、他のノンバンクにも対象を広げるかどうか検討する予定とのことだ。この資金供給は国債を担保にした融資の形態で行われるが、適格担保を国債以外にも広げる可能性がある。英国中銀は、これと同時に銀行や保険会社に対する規制緩和を計画していると述べている。

確かに昨年9月のGilt Shockでは、金利上昇によって国債売却を余儀なくされたのは銀行ではなく、こうしたICPFsだった。金融危機以降このICPFsのバランスシートはほぼ倍増しており、銀行の成長率をはるかに凌いでいる。ノンバンクのバランスシートは市場全体のほぼ半分のシェアを占めるほどに成長しており、今後は銀行ではなく銀行以外が金融の中心になっていくことは間違いない。資産運用立国を目指す日本でも同じような動きがみられることになるだろう。