日本の社債市場活性化へ向けた取り組み

日本では、社債市場活性化のために長年検討が続けられてきたが、未だに社債市場の規模は海外に比べて格段に小さい。

この度JSDAから「社債市場の活性化に向けた今後の検討について」とう資料が公開されている。一方金融庁のホームページでも9月に社債市場の分析資料がポストされている。

以前は年間10兆円を下回っていた社債発行額だが、最近ではコンスタントに10兆円を超えるようになっており、多い年は15兆円を超えている。残高ベースでも100兆円を伺う水準にまで増えてきている。
ただし、米国の発行額は年間200兆円に近く、残高も1400兆円近いため、日本との差は歴然としている。レポートが示すように、日本の社債は9割以上がA格以上で、優良企業のみが発行するものになっている。投資する側から見ても、日本では株式ファンドばかりが選好され、債券ファンドはほとんど見られない。投資家層も銀行や保険、年金がメインで、個人が投資をする割合は極めて低い。

したがって、投資家保護の観点も株式に比べると注目度合いが低く、プロ向け市場となっている。そもそも優良企業による発行が主なので、利回りも低く、デフォルトなどしない前提で取引されているので、いざという時の想定外の損失が大きくなる。個人的な社債トレーディングの経験からも、低金利のクーポンの社債を買って最後まで持ち切るというのはあまり面白い取引ではない上、何か信用不安が発生した際には突然時価評価額が急落して損失を被るため、非常に取引しにくい商品であった。

今回は投資家保護の観点から、コベナンツ強化が課題として挙げられている。社債権者の権利保護を主眼に投資家保護をしようという方向性は正しい。しかし、だが、コベナンツ条項を入れたからと言ってすぐに社債取引が増える訳ではないので、複数の改革を同時に進めていく必要がある。

最近デフォルトが発生し投資家が損失を被った事例を下にJSDAが「近時のデフォルト事例に見る我が国社債市場の課題について」を公表している。なぜか企業名が伏せられているのでここでも書かないが、久しぶりの社債デフォルトであり、社債権者の権利の弱さを認識する事例だったのは確かである。個人的にも、いつも銀行などの方が情報を持っているだろうし、発行体ともつながっているから、情報は入ってこないし、きっと銀行には劣後してしまうんだろうなと思いながら投資をしていたが、確かに海外では銀行と少なくとも同列であるべく様々な手当てがなされている。

今後もJSDAで以下のような点を中心に議論していくとのことなので、社債市場の今後の発展に期待したい。

  1. コベナンツ付与のあり方
  2. 社債管理補助者に期待する役割
  3. 社債権者への適時適切な情報提供
  4. その他、社債権者保護に関する事項