割引率変更時にCash Compensationを行わないのがマーケットスタンダード?

LIBOR改革にともない割引率が変更される際には、Swaptionなどの相対取引の時価が変更になるため、利益や損失が出ることがあるが、これを現金で決済(Cash Compensation)して、スムーズに移行させることをECBの委員会やARRCが推奨していた。しかし、JPMorgan、ドイツ銀、野村等が顧客に対してこの現金支払いを行わないと連絡しているというニュースが出ている。

今週月曜のEONIAからESTRへの変更は滞りなく行われたと思っていたのだが、やはり業界でコンセンサスが取れなかったのかもしれない。契約上きちんと定義していないことはやらない、業界標準のやり方が固まって、単純に当初の契約通りに処理をするというのが理由として挙げられている。ただし、一部の銀行はこの支払いを行う方針を打ち出しており、業界としてもかなり混乱している印象を受ける。

確かに銀行としても、自分のポジションが損をした場合だけ現金支払いを受けられず、自分が得をするときにはそれを相手方に払い出すとなる可能性がある。当局がバックについている委員会で推奨されているのだから、全員が受け払いをするというのが最も美しい解決策だと思っていたのだが、現実はそれほど簡単にはいかないようだ。

しかし、こうなると10月のUSD FFからSOFRへのディスカウントレート変更に際しても大きな問題が発生する可能性がある。そもそも現金決済を合意したとしてもその金額まで完全に合意するのは難しい。

相対の担保契約も年末までに変更するというのがARRCのベストプラクティスだったが、この変更時にも時価の変化によって損益が発生するので、こちらも予定通りに進むかどうかが怪しくなってくる。

当局がステップインしない限り、デリバティブでもLegacy契約が残ってしまうことになりかねない。10月までに何らかの解決策が見いだされることが期待される。

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