バーゼルIIIの最終化タイミング

バーゼルIIIの最終案施行に向けて欧州の銀行はすでにかなりの資本を積んでおり、2028年の期限までにあと6億ユーロのTier 1資本を追加すればよいだけだというコメントが欧州当局から出されている。これは2022年末時点でEUの157行を対象にしたモニタリング調査の結果によるものである。

欧州のバーゼルIII最終案の施行は2025年1月からとなっており、2028年までの移行期間が設けられている。米国は6カ月遅れで施行開始となるが、移行期間が短いため最終期限はEUと同じタイミングになる。英国の銀行は施行開始を米国と同じように半年遅らせることを提案しているが、最終的な結論は2024年中に出されると予想されている。世界全体でみると、約2/3の国において2024年末までにほとんどのルールが施行され、残りは2025年に適用されると予想されている。

同じくバーゼル委員会からは、資本の不足額は以前予想した78億ユーロより少なく、約30億ユーロとなるとのコメントもあった。

当初はかなり大騒ぎになったが、各銀行における分析も進み、若干落ち着きを見せている。それでも一部のビジネスにとっては大きな資本コストとなるため、さらなるレビューが必要となる。

一つ懸念なのは、今回の変更がどれくらいのインパクト及ぼすのかが簡単には把握しずらいという点である。業界内では誰しもがBasel IIIのEnd gameについて話題にしているが、その影響について詳細に理解している人が極めて少ない。このままだと実際の計算をしてから始めて思いもよらない影響が明らかになり、市場流動性に支障をきたすということもありうる。ルールをあまりにも複雑にしたため、余計混乱を招くという典型例にならないことを願うばかりである。