OTCから先物へのシフト

欧州のCCPであるEurexが満期を自由に選べる為替の先物を上場すると報じられた。Flexible FX Futuresとも呼ばれるこの商品はシンガポールでは既に2018年から主にUSD vs CNHで取引されている(CNHはオフショアのDerivarable為替)。

一般的に先物の場合は期間が統一されており、一般的にIMM Dateを満期としているが、この満期をOTCのように自由に選べるようにしたものだ(IMM DateについてはMAC Swapの記事を参照頂きたい)。昨年1月以降、米銀がCA-CCRに移行し、為替取引に対する資本コストが増加してしまったが、相対取引ではなく、取引所取引にしてこのコスト削減を図ろうという動きの一環だ。EFP(Exchange for Physical)とこのFlexible FX Futureを組み合わせることによって、バイサイドとの相対取引を何とか取引所に移行できないかという試みである。

急激な為替変動によってカウンターパーティーリスクが増えるのを避けることもできる。SVBの破綻やCSとUBSの合併によって、カウンターパーティーリスクが再度注目を集めるようになったが、結局のところ、こうしたリスクを避けるにはCCPや先物へのシフトを進めるのが最も簡単だ。危機になると、当然CSのような取引先を避けようという動きが出てくるが、それでもCCP経由の金利スワップについては、全く影響は出ていなかったはずである。

一方、コモディティ取引では、急増するマージンを嫌い取引所からOTCへという逆の動きがみられるのは懸念材料だ。コモディティCCPの参加者には、大手銀行というよりはコモディティ専門ブローカーやエンドユーザーが名を連ね、CCPの頑健性を高めるよりは、マージンや清算基金を減らしたいという声の方が大きくなってしまう。金利やCDSなどの他のCCPとはかなり雰囲気が違ってくる。ここはある程度当局の介入が必要なのだろう。

しかし、今回のCS騒動でも明らかになったが、やはり担保コストはかかるものの、CCPや先物は金融の安定性を高めるには不可欠である。本来は担保は極力現金などの流動性の高い資産に限るべきだと思っていたが、もしかしたら、ある程度幅広い適格担保を許容して、急激なマージンコールの急増によるプロシクリカリティを招くことなく、安定的な取引ができる方向を目指すべきなのではないかと思うようになってきた。

まずはできるだけ多くの商品を取引所やCCPにシフトさせ、CCPで清算できないようなスワップションや通貨スワップなどは、LCHのSwapAgentのような方法で、できるだけ標準的なプロセスのメリットを享受できるようにし、その上でOptimizationによりリスク削減を行う。VMについてはプライシングの問題もあるので基本現金なのだろうが、IMについては適切なヘアカットを設けた上で適格担保を拡げ、クロスマージンなどの担保削減手法も活用すべきだ。

VMについても、以前のStandard CSAで使ったような方法を取ることにより、USD IRSに対してJPY Cashを出せれば、日本の参加者がドル調達に困難を来たすリスクが小さくなる。現時点では、これが今後のあるべき方向性というような気がする。