LIBOR改革が市場の標準化を加速させる

LIBOR改革にともないユーロのEONIAが公表停止となった。EURを適格担保にしているCSAについては、昨年以来EONIAをESTRに変更する交渉が行われてきた。CCPにおいても2021年7月にこの変更が終了しており、既にESTRフラットでの割引が行われている。この交渉を行っていなかった市場参加者は、EONIAがなくなったためESTR+8.5bpにフォールバックしてしまった。

EONIA=ESTR+8.5bpに設定されているが、CCPと異なるESTR+8.5bpにするのも面倒なので、本来であれば、担保金利をCCP同様ESTRフラットにするのが最も望ましい。しかし、この場合割引率が異なることからスワップの時価が変動し、勝ち負けを現金決済する必要がある。この金額について取引当事者が合意することが難しいので、既存取引はESTR+8.5bpとした契約が多かった。また、新規取引はESTRフラットにしておき、古くから残るレガシースワップのみESTR+8.5bpとしているケースも見られる。

最も面倒なのは国債や社債など、現金以外の担保が適格とされているCSAだ。業界ではこうした非標準のCSAをDirty CSAと呼んでいる。これには、調達コストが安い担保を選んで拠出できるため、CTDVAがかかっている。CTDVAはCheapest to Deliver VAの略で、複数の担保を選択できるオプションの価値(評価調整)である。債券担保の場合の割引率は債券のレポレートによって計算するが、長期のレポのタームレートは存在しないため、このオプションの価値を当事者同士が完全に合意するのはかなり難しい。

ここまでくると、CSAを極力標準的なものにして、CCPと条件を合わせていきたいという市場参加者が増えてくる。おそらく市場の流動性向上のためにはこれが最も望ましい。あるいは、LCHのSwapAgentを利用して標準的な割引率を利用するのも検討に値する。今後は取引相手毎に個別に契約をカスタマイズするのではなく、極力市場標準に合わせていく方が望ましい。これは日本が一番不得意とするところであるが。