CMEのLIBOR移行プラン

EUREXに続いてCMEのプランを見てみる。概ね同じようなプランだが、FallbackでできるフォールバックRFRスワップと標準RFR Swapの違いが分かりやすかったのでまず紹介しておく。リンクにつけたプレゼンの2頁目にある以下の図だが、1がこれまで何度か説明してきたFallbackでできるスワップ、2が標準スワップである。

現在のLIBORは一番上で、Fが金利が決まる日、Pが金利支払日となる。つまり、例えば今後3か月間の金利は今日決まり、それを計算期間の最終日である3か月後に払うというスケジュールである。

ISDAのLIBORプロトコルでできるスワップは金利が後決めなので、FがPの直前に来ている。そして計算期間が前倒しになっている。金利が決まってその日に払うことはできないので、計算期間を2日程度全体的にずらす形だ。

一方市場標準のOISは、計算期間はずれないが、金利支払日を後ろにずらす。金利決定日のFが計算期間の最後に来ているので後決めと言われる。一方LIBORは前決めである。つまり、LIBOR移行によってこれまで前決めだった金利が後決めに変更されるため、資金決済のオペレーションのシステム化が遅れる日本ではこれがネックになっている。TORFなどのターム物RFRでは前決めが使えるので、TORFの流動性向上を待ちたいという市場参加者がいるのかもしれない。

後決めだと、例えばローンを借りた時に、今後3か月の金利は最後に決まりますよと言われるようなもので、しかも決まった日から二日後にそれを振り込んでくださいと言われるようなものである。資金決済がオートメーション化されている海外ではそれほど問題ないが、決まった金利の通知を受けて、それを振り込み指示するという手作業を行っていると、2日後に着金が間に合わないということも起きる。担当者が休暇の時に対応できないとか、祭日に対応できないという問題もある。

とは言え、後決めが主流というのは特にデリバティブの世界では一般的になっており、これを覆すのは困難だと思われるので、後決めのシステム対応を進めるしかない。

さて、話をCMEの移行プランに戻そう。他のCCP同様、CMEでも一括変換の検討は行われているが、それが望ましいのか結論づけてはいない。他のCCPとの調整も必要であり、Duratrionや割引率変更のリスク、ヘッジ会計や税務面への考慮が必要としている。

それぞれの変換手法についての課題が以下のように整理されている。

ISDA Fallback

  • 後決め等から発生するオペレーション面やリスク管理面の懸念
  • 業界で広く認知された方式
  • LIBOR移行後のSwaption行使によって発生したスワップが清算可能

標準OIS

  • 上と同じオペレーション面、リスク管理面の懸念
  • Swaption行使後のスワップが清算できない

Observation Period Shiftを行ったOIS

  • リスク管理面での懸念に対応
  • 支払日がISDA Fallbackと同じ
  • Swaption行使後のスワップが清算できない。

これらの点を明確にした上で、市場参加者への意見を求めている。これだけ見ると3番目の観測期間シフト方式を選好しているような印象を持ってしまうが、おそらく他のCCPの動向を踏まえて2の方向になるのではないかと個人的には予想している。

方向性は3月末までには決めるとしており、そこから30日のコメント期間に入る。詳細な計画は4月か5月上旬に公表するようだ。タイミングやオペレーションの詳細については、具体的な言及はない。いずれにしてももう少しすれば様々な情報が出てくるものと予想される。