BREXITによって欧州から米国への取引シフトが起きている

Brexitが金融機関に与えた影響は意外と大きかったようだ。欧州の銀行のデリバティブ取引シェアが減少し、収益にも影響が出始めているという報道があった。今回もっとも恩恵を被っているのは米銀のようだ。

EUの銀行は英国の取引基盤(Trading Venue)へのアクセスを持てなくなってしまったので、英国の機関投資家や銀行との取引から締め出されてしまった。これを解決するにはEUの銀行は英国に現地法人を設立しなければならなくなる。

結局は多くの取引が、同等性がある程度確保されたUSのSEF(Swap Execution Facilities)に流れている。ディーラー間取引について言えば、US SEFの取引は今年1月に10倍以上に伸びている。確かにUKとEUとの争いに巻き込まれ、それぞれの取引Venueに接続するよりは、すべてUS SEFに持っていた方が簡単だ。

金利スワップは半数以上がこうした取引Venueで取引されておりCDSのインデックス物などは、ほぼすべてが取引Venue上の取引である。ちなみに日本はETP(電子取引基盤)なのだが、こちらはSEFを参考にして作られたが、同等性を確保するためだけに作られた感が否めず、取引に占めるシェアは極めて低い。

アセマネや年金などもUS SEFに移す傾向がみられるようだが、英国のリアルマネーはそのまま英国で取引を継続しており、ここにはEUの銀行がアクセスできなくなっている。UK VenueのシェアはEUR IRSについては未だ11%、GBP IRSでは21%、USD IRSで6%とそれなりのシェアを占めている。

数年前にも書いたことだが、海外でビジネスをする際の拠点は支店と現地法人のどちらが望ましいのかという問題がここでも重要になってくる。現在の規制環境下においては、支店形式は好まれず、自分の国でビジネスをするのであれば、その国の規制を遵守し、資本もその国の中に置いた現地法人が有利なのは当然である。EUの銀行は現地法人ではなく支店形式で海外進出をしているところが多いので、こちらも状況の悪化に拍車をかけている。

一方米銀や英銀は、現地法人形式で海外拠点を作る傾向があるので、かなり有利である。Brexitで英国を締め出そうとしたEUが、実は不利になるという皮肉なことが起きている。ただし、これによって英国にも交渉力が生まれるので、規制の同等性を認め欧州全体の利益を考えるような方向に進むかもしれないという期待も生まれる。

国際金融ハブを目指す日本にとっても、この辺りの動きは非常に参考になる。簡単に国境をまたいでしまう金融取引は、すぐに最もオープンな場所に流れてしまうということは、今回の例を見れば明らかだからだ。