BISのドル調達関連レポート

昨年2020年の今頃に感染拡大から現金回帰が強まり、ドル資金のひっ迫が発生した。その後中央銀行のドル供給オペレーションによって落ち着きを取り戻したが、この辺りの市場の変化について、BISがレポートをまとめている。結論から言うと以下の3点に集約される。

  • 米国外銀行は、米国内からまたは、オフショアのMMFファンドからドル調達を行っていたが、2020年にはこれがその他の銀行以外からの調達にシフトした。
  • 通常MMFからのドルの最大の取り手である日本の銀行とカナダの銀行のドル調達が2020年3月以降減ったが、これは2020年末までに回復しておらず、最大の減少となっている。
  • 社債発行市場においてはドル債発行のニーズは衰えておらず、2020年3月の市場混乱以降、ドル債のシェアが伸びている。

2020年第三四半期末時点における米国外の銀行のドル負債は、以下のような構成になっている。ここ数年の動きを見ると、米国外のドル預金とドル債が増えてきている。これ以外は米銀や中銀に対する負債である。MMFから銀行以外への調達シフトが起きていはいるが、これが構造的なのかは現時点では不明とされている。

米国内のドル預金24%
米国外のドル預金49%
ドル債23%

この中でドル債調達が過去5年の間に増え続けており、全通貨の社債に占めるドル債のシェアは、2015年末の38%から2020年末には44%に増えている。2020年に関していうと、邦銀と独銀の発行が減っている。2020年末に残存するドル債の総額でいうと英国に本拠を持つ銀行がトップで15.8%のシェア、次いで中国(9.5%)、日本(8.7%)と続く。

これを見る限り、ドル調達ニーズは引き続きあるが、ドル債の発行は今後も増えていくことが予想される。ドルニーズの高まりは2020年3月のような混乱を引き起こす可能性もあるので、今後の動向にも注目したい。特にSLR(Supplemental Leverage Ratio)の免除が3月末以降も継続されるかどうかに注目が集まっているが、この延長が却下されると、米国債市場への混乱、ドル資金に対するニーズの拡大、ドル円ベーシスの拡大といった形でマーケットにインパクトが波及することもあるので注意が必要である。