Archegosショックについて

週末から金融業界はArchegosの話題で持ちきりだが、見方によってはこれも規制の産物と言えるのかもしれない。昔であれば株式のエクスポージャーを取りたければ、マージンレンディング等が様々な方法があるが、こうしたSecurity Financeはレバレッジ比率規制等の規制上不利になり、トータルリターンスワップを使った方が所要資本が低いということが起きる。

ヘッジファンドにとっても株を買う必要はなくマージンコールにさえ応えられれば良いため、レバレッジがかけられる。中央清算機関での清算や取引報告要件も弱いため、ニーズが高まるのは当然である。

また、スワップ形式であれば想定元本を小さくして取引をブックすることも理論的には可能であり、元本のみに注目する規制上更に有利になる。100億円の元本で1%の金利を支払うスワップと10億円の元本で10%の金利を払うスワップは、全く同じペイアウトになるものの、想定元本は後者が10分の1になり、レバレッジ比率規制上の所要資本も大幅に減少する。

国債でも同じで、レポを行うよりはTRSにしてしまった方が所要資本額を減らせる可能性がある。バックストップとしてのレバレッジ比率規制なら問題ないが、これが最大の制約になっており、先月のように規制緩和延長を巡って市場が動いたりするのは本来望ましくない。

本当ならリスクの高い取引の所要資本を大きくするべきなのだが、国債取引やレポをするくらいならスワップにしてしまった方が得策になる。このインセンティブを何とか修正すべきだというのはここで何度も主張してきたことだ。

それにしても日本の金融機関までもが巻き込まれているのは若干残念だ。ローンの世界だと返済猶予を与えるのにそれほど大きな抵抗はないかもしれないが、証券取引の世界だとほんの少し支払いが遅れただけでもクローズアウトに走るのがこの世界では一般的である。一分一秒を争うので、夜中だろうが何だろうが、緊急電話会議を行ってポジションをクローズするのが通常だと思われるので、初期動作の遅れは致命傷となる。こうした危機管理対応にはある程度の慣れが必要なのかもしれない。