資産運用特区に4都市が名乗りを上げた

資産運用特区の意見募集が締め切られたが、東京、大阪、札幌、福岡の4都市が手を挙げている。東京都の提案を見てみると、業界でも問題となっている点に踏み込んでいる。おそらく関係者にヒアリングを行って取りまとめたのだろう。とても良くまとまっていると思う。

組織体制の登録要件の厳しさは改善すべき点であり、特にコンプライアンスオフィサーを雇うのに苦戦している人も多く、参入障壁になっているという声が良く聞かれる。投信協会加入義務についても、撤廃までいかなくとも報告義務緩和が提案されている。家事使用人については、2021年の規制緩和でかなり使い勝手が良くなったが、東京都はさらなる緩和を求めている。親の帯同要件緩和までも提案に含まれている。

若干細かい点だが、海外からの投資収益についての免除期間を5年から延長するという要望は入っていないようだ。実際海外から日本に赴任してくる金融の高度人材は、5年間で帰国しようと考えている人も多い。

海外の人は通常海外証券会社で投資を行っており、日本に来たからといって、日本の証券会社にポジションを移す人は極めて少ない。海外証券会社は金融庁登録をしていないところが多いので、たとえ海外上場株を取引したとしても未上場株として確定申告をしなければならず、損益通算や損失の年度繰り越しが認められない。

海外の人にとっては、給与収入とともに投資収入に対する関心が高いので、5年を超えると全世界が所得税の対象となり、確定申告時に不利になるということがわかると、何とか5年以内に帰国しようという人が出てくる。ただし、最初からこれに気づいている人は少ない。

日本人でも海外証券会社経由で外株の取引をしている人は多いと思うが、かなりの人が上場株として申請してしまっているのではないかと推測される。金融庁に登録のない外国証券会社を使って取引した場合の税金の扱いについての情報が少なく、税務署に聞いても直ぐには申告方法の詳細がわからないことが多いからだ。これが英語となると尚更だ。

細かい点はさておき、資産運用特区については、日本の金融の発展のためには、望ましいイニシアティブであることは間違いない。金融のみならずグローバル企業のトップになると、中国系やインド系は多くても日系人は極めて少ない。最近では中国以外のアジア各国出身者の重役就任も増えてきた。英語や自己主張に難があるのか日本人のプレゼンスはあまり上がってこない。

東京都のプランには、英語による生活・ビジネス環境整備の新たな試みが含まれているが、さらに進めて、English Town構想をぶち上げても良いのではないかと思う。インターナショナルスクール、海外の病院などを誘致し、行政もすべて英語対応を可能にする地域を作り、人を呼び込んではどうかと思う。

すでにニセコなどでは、公用語が英語なのではないかという状況になっている。時給も上がり英語も学べるので若い人がニセコにバイトに行ったりしているが、東京でEnglish Townができれば、海外の人を呼び込むだけでなく、子供に英語を習得させたいと思う日本人が集まってくる可能性もある。そこだけ収入が高くなり高級住宅街となれば、税収もあがり、その税金からさらなる都市機能強化が可能になる。

何とか日本のガラパゴス化を食い止めることができないか、特にグローバルなつながりが深い金融からそれができれば望ましいと思う。