市場価格の統制は可能か

欧州ガスデリバティブにおいて、CCPで取引されないOTC取引のシェアが、1年前の15%から1月第二週に25%へ上がったと報じられている。価格上限が設けられたことが影響しているという報道が多いが、増え続けるCCPの証拠金を敬遠する動きもあるのだろう。実際に上限が入るのは2/15からなのだが、どの程度のシフトが起きるかに注目が集まる。

ICEでは、EUの規制の及ばない英国において2/20からTTF先物の取引を始めることをアナウンスしているが、上限のあるEUの先物と、上限のない英国の先物が分かれることになる。EUも負けじとOTF(欧州版のSEFのようなもの)で上限のない先物の取引をはじめるので、マーケットが混とんとしてきた。そもそもここまで流動性が下がっている中、市場を分断させるのは通常望ましくないのだが、今後どの程度の流動性ショックが起きるかに注目が集まる。

トレーダーとしてはOTCで上限無しの取引をした場合、それを上限有りの商品でヘッジするのはあり得ない。当然社内のリスク管理上もそんなTailリスクは取りたくないだろう。そうすると当然上限有りマーケットと上限なしマーケットの二つが分断される。上限がある方が価格変動が抑えられるので、当初証拠金が少なくなる可能性もある。そうするとファンディングコストや資本コストが異なるので、プライシングにも差が出てくる。CCPの参加者にデフォルトが発生した場合、上限有りのポジションを取っても良いという参加者が少なくなり、オークションの成功可能性が低くなることも考えられる。

当局サイドも3/1まで市場の動向を注視し、評価を下すことになっているが、市場の動きが上限撤廃を促すような形になるかもしれない。日銀のYCCのように50bpで上限をつけていたら海外投資家がそれにチャレンジをし始めたというのと構図は同じであるが、JGBとは流動性が格段に異なる。ただし、国債のカレントと先物やスワップ金利が乖離したのと同じことが起きてもおかしくない。上限撤廃を目論んで投機筋が動き出さないとも限らない。こうなるとリスク管理者としてはなかなかこのリスクを持ちたくなくなるため、流動性が枯渇していく。最終的には、上限撤廃を余儀なくされるのではないだろうか。