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電子プラットフォームによる取引執行規制

日本ではリーマンショックと言われた2008-2009年の金融危機によって様々な規制が導入された。当時規制強化を語る時に何度も使われたのがG20ピッツバーグサミットの合意だ。この中で、すべての標準化された店頭デリバティブ契約は、遅くとも2012年末までに、可能な限り取引所または電子取引プラットフォームで取引され、CCPによって清算されるべきであるとされた。

当時からLCHのようなCCPは取引清算を行っており、リーマンのポジション清算も滞りなく終えていたが、ここから様々なCCPが設立され、その清算集中義務化も進んでいった。同時に、米国ではSEF(Swap Execution Facilities)、欧州ではOTF(Organized Trading Facilities)やMTF(Multilateral Trading Facilities)、日本ではETP(Electronic Trading Platforms)といった電子プラットフォームに関する規制も導入されていくことになる。

当時リーマンを筆頭に巨大なリスクを抱えた金融機関が多く発覚したことから、透明性を向上するために、すべての取引を「見える化」することによって、金融危機の再来を避けようというものである。

米国では、デリバティブ取引の大半が相対で行う店頭(OTC)取引であったため、ドッド・フランク法によって、それらをSEF上で行うことが義務付けられ、取引の透明度の向上や金融規制当局の不正監視が可能となった。同時に取引を即時報告するリアルタイムレポーティングも義務付けられることとなった。これによってトレーダーが自分が執行できなかった取引を日々SDR(Swap Data Repository)で確認することも一部可能になった。

当時は、米国が先行導入したため、一時的に取引が米国外に流れたこともあったが、もともとG20 の合意でもあるため、欧州、日本でも、最終的には同様の規制が導入された。ただし、各規制は細かい点で異なっているため、一部では米系金融機関との取引を避けるケースもあったと報道もされた。

米国SEF規制の対象となるのは、MAT(Made Available to Trade)に指定された取引となっている。では、MATに該当するかどうかは当局が決めるのかというとそうではなく、SEF業者が決める仕組みになっていたが、見直しの議論が続けられている。

所謂ブロック取引と呼ばれるサイズの大きな取引は、マーケットに与える影響から、取引の即時報告が免除されたり、時間を遅らせた報告も認められた。特に巨額のコモディティスワップなどは、誰が取引をしたかが市場関係者であれば何となくわかってしまうこともあったため、リアルタイムレポーティングは市場参加者にとっては、重要な問題になってくる。

日本の場合は、電子取引基盤の利用義務付けに関する「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が2012年に成立し、2015年から施行されている。大手金融機関同士が行う一定の店頭デリバティブ取引は電子取引プラットフォームの利用が義務づけられ、電子取引基盤運営業者よる報告義務が課されることとなった。この規制の対象となるのは、店頭デリバティブ取引の残高が 6 兆円以上の金融機関同士が行う年限 5 年、7 年、10 年の円金利スワップとなっている。日々当該取引が公開されているが、実際のデータを見ると、利用件数は海外に比べるとかなり少ない。